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キーエンスで25年「元採用トップ」が明かす極意→平均年収2000万円でも高収益を維持できるのは"創業者の理念"、ESと志望動機は不問の納得理由

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キーエンスの営業利益率は過去11年間、50%を切っていない(撮影:梅谷秀司)
「平均年収2000万円」という好待遇で知られるキーエンス。製造現場で使われるセンサーや計測器など、FA(ファクトリーオートメーション)向け精密機器を主力とするメーカーでありながら、2025年3月期の営業利益率は51.9%をマークする。時価総額は約13兆5000億円(12月12日時点)と、同業他社を引き離す。
超高収益を実現するためのキーワードとして、会社やOBが頻繁に挙げるのが「付加価値」だ。キーエンスの営業では、顧客すら気づいていないニーズを顕在化させ「こんな製品が欲しかった」と思わせる商品を企画するのが強みの1つ。新製品の7割は世界初と言われるほどで、当日出荷体制を構築するなど迅速な納品にも特徴がある。
「現在のキーエンスで営業を担う社員の8~9割は、自分が作った採用の仕組みで入社した」と語るのが、キーエンスで22年まで約25年にわたり採用責任者を務めた小島哲也氏だ。独特なキーエンスの採用や人材育成について、小島氏に聞いた。

採用力は“3領域”の掛け算

――キーエンスの特異性は営業面から語られることが多いですが、選考プロセスでES(エントリーシート)不要を明言するなど、人材採用も特殊です。採用方法を考える際、社内でどのような議論から始めましたか。

私が中途入社した1997年2月頃、キーエンスの採用方法は、十分に考えられたプロセスに思えなかった。これでは会社が求める人材を選び抜けないと思い、改善へと乗り出した。

キーエンスは「仕組み」を非常に大切にする会社だ。どの社員でも仕組みに従えば、効率的に成果が出せるように業務プロセスを定めている。私も入社早々、仕組みというキーワードを何度も聞き、人材採用でもそれに倣う必要があると感じた。

――具体的には、どのような仕組みを考案しましたか。

企業の採用力は“3領域”の掛け算で決まる。母集団形成力、選考力、辞退防止力、それぞれの領域で「差別化された、まねされにくい、競争力のある」仕組みを作ろうと考え始めた。

たとえば母集団形成を考える時は、3段階に分けた。第1段階はアプローチしなくても採用にエントリーしてくれる層だが、ここだけを相手にすると母集団が限られてしまう。

第2段階は潜在層でも顕在層でもないような、キーエンスの存在を知ればエントリーしてくれる層。この層には会社情報を提供するだけでよく、つまりPRすればよいということだ。ここまではどの企業の人事部もやっていることだと思う。

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