社歴を重ねた実務家社長が戦略で暴走する理由 「既存事業のテコ入れ策」ばかり見えすぎる罠

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実際に空を切る戦略が少なくないのは、免疫不全のなせる業にほかなりません。

経営戦略は未来に立ち向かうもの

過去バイアスも気になります。

高収益事業の創り方(経営戦略の実戦(1))
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経営戦略は未来に向かって打つものなのに、社歴の長い経営者は過去に立ち返ってしまうのです。

社業に精通すればするほど、既存事業のテコ入れ策が見えてしまい、前任者たちが犯した間違いを修正するほうが、早く株主に喜んでもらえると考えるのでしょうか。

だとすれば、未来に立ち向かう経営をしていないと指摘されても、反論できません。

分業体制に組み込まれて仕事をする人たちには、経営や戦略の経験学習を積む機会がほとんどないので、座学を積まない限り無免許で経営することになってしまいます。

それではまずいと考え、本書を送り出すこととしました。

水面下の壮絶な駆け引き

このところ将棋観戦が格段に面白くなりました。

セミプロのユーチューバーたちが、棋譜に現れなかったシナリオを終局後に解説してくれるので、水面下の駆け引きが観戦者にもわかるようになったのです。

彼らがあぶり出した光景は、壮絶な格闘技以外の何物でもありません。

経営も同じです。大正製薬の上原正吉は次のように語っています。

商売は戦いである。ただ、この戦いは進行がきわめて緩慢だから、なかなか戦っているという実感を持ちえない人が多い。(中略)じりじりと本人たちの気づかぬままに進行し(中略)きわめて深刻な勝負がつく。

戦略は、競合や顧客に知られると不都合なことが多いため、どうしても水面下に潜りますが、それを推し量って部外者に理解できるようにしないと、戦略論にはなりません。

推量は外れるリスクと背中合わせですが、水面下の戦いから学ぶには、取るに値するリスクでしょう。「実戦」は、こうした水面下の駆け引きを主体とする点で、水面上の「実践」と大きく異なります。

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