社歴を重ねた実務家社長が戦略で暴走する理由 「既存事業のテコ入れ策」ばかり見えすぎる罠
戦略と似て非なる概念に管理があります。
ゼネラル・エレクトリック(GE)のジャック・ウェルチは、戦略は“do the right thing”、管理は“do everything right” を使命とすると、ハーバード大学のMBA在学生に向かって1985年に説きました。
「戦略」と「管理」の違い
戦略は事業のツボを外してはダメ、管理は部下のミスを逃してはダメということです。
それに続くオチは、管理ができる人材は掃いて捨てるほどいる、戦略ができる人材は虫眼鏡で探さないと見つからない、でした。
ウェルチが主張したとおり「戦略」と「管理」は異なるタイプの人を要するとしたら、管理者として才を発揮した人のなかから経営者を選ぶと「経営」は「運営」に化けてしまい、戦略は機能不全に陥ります。
そこで、本書では「経営戦略の実戦」と「運営管理の実践」を厳密に区別します。皆さんには、運営管理の達人になってしまう前に戦略を学びなおしてほしいのです。
戦略と言えば「一呼吸おいて少し頭を働かせた意思決定」程度の軽い用例が目立つなかで、本書では経営戦略を限定的に定義します。
次の定義にそぐわない打ち手は、すべて戦術と見なしてください。
経営戦略=限られた経営資源の非可逆、非可分、非合理な配分
定義中の経営資源とは、ヒトとカネのことです。モノや情報を含める人もいますが、モノはカネで買えます。情報は共用・共有するもので、配分できません。
次に「配分」にかかる修飾句ですが、人員の配置と予算の配分を決めれば何でも戦略になるかと言えば、違います。いつでも元に戻せる可逆な配分や、小出しにできる可分な配分、そして誰から見ても合理的な配分では、同業他社に決定的な差をつけることなどできません。
ちなみに、「非合理」は常人の「理性や知性を越える」という意味で、道理や理屈に従わない「不合理」とは区別します。
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