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日銀利上げへ、総裁の「中立金利」発言の真意とは/中立金利は「動く標的」、利上げ回数の指標にならない

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12月に入って踏み込んだ発言を続けている日本銀行の植田和男総裁(写真:Bloomberg)
この連載が「東洋経済オンラインアワード2025」で「会員コンテンツ特別賞」を受賞しました。「元日銀企画局審議役という経験を生かした緻密な金融・経済政策の分析で、(中略)投資家情報として必須となる日米の金融政策決定会合の見通しを的確に読み続け、有料会員読者から高い支持を集めています」と、面映ゆいが大変光栄な受賞理由を挙げていただきました。今後も期待に応えられるよう、データ発表ごとに揺れ動く市場の見方とは一線を画した、一貫性のある分析を読者に提供していきたいと思います(念のため、投資は自己責任でお願いします)。

日銀12月利上げはこれまでの予想どおり

わざわざ上記で「一貫性のある分析」と言っているのは、筆者はトランプ大統領就任後から一貫して、その間4月にトランプ関税の発表で市場が揺れたとしても、ぶれることなく、「次の日銀の利上げは秋」とこの連載で書き続けていたからである。

この間、市場のコンセンサスは「年内利上げなし」と言ってよく、特に、10月の高市政権発足直後は、政権が日銀の利上げを抑え込むとの見方で「年内どころか政権が続く限り利上げなし」といった見方さえあった。政権発足直後の株価の急騰はそうした見方を支えにしたものだっただろう。

元日銀企画局審議役が日本&アメリカの金融政策を徹底予測

そんな中、筆者は前回10月の連載でも「10月利上げに機は熟した」「先送りがあるなら、あくまで手続き面が理由」として、「日銀には『首相と総裁の顔合わせ前に利上げをして、無用な波風を立てるのは避けたい』という気持ちが働くことはあっても、『利上げをすると首相を怒らせそうだから、利上げをやめておこう』という発想はないはず」、「たとえ、10月利上げが見送りになっても、それは政権発足が決定会合の直前になった政治日程のせいであって、『アベノミクス1.0』をそのまま倣えばいいという思考停止の結果ではない」と書いた。

はたして、日本経済新聞が早々と12月利上げの観測記事を書くなど、すでに12月利上げは既定路線となっている。市場の見方は10月時点の「利上げ当面なし」から直近の「12月利上げ確実」まで大きく振れたわけだが、それは円安と長期金利上昇(債券安)が同時並行で進んだことが原因である。

為替は一時1ドル158円近くまで円安が進み、長期金利は2%寸前まで上昇した。債券安と円安が同時進行する「悪い円安(=日本売り)」だ。高市政権が日銀に金融緩和の維持を求めても、長期金利は意に反して上昇し、緩和効果を自ら減殺する結果を招いている。

次ページ利上げの理由もこれまでの分析通り
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