日銀は7月31日の金融政策決定会合で0.25%への利上げを決めた。判断の背景に何があるのか。
「金利ある世界」――。3月に日銀がマイナス金利を解除する前後から世に出回るようになったフレーズだ。1999年にゼロ金利政策を導入して以来、長らく短期金利はゼロ前後にとどまり、2013年の異次元緩和に踏み込むと長期金利もゼロまで下がった。そのような超低金利状態を脱することを意味する。
7月31日、日銀は3月にマイナス金利を解除して以来の利上げに踏み切った。政策金利(金融機関同士がきわめて短い期間で貸し借りする際の金利)の誘導目標を0.25%とした。リーマンショック後に利下げした2008年以来の水準となる。
この決定を受けて、三菱UFJ銀行は貸し出し金利の基準となる短期プライムレートを17年ぶりに引き上げたほか、メガバンク3行は預金金利を0.02%から0.1%に引き上げると発表した。短期プライムレートは住宅ローンで7割を占める変動金利の基準であることから、住宅ローン返済の負担増につながるのは確かだ。
景気減速リスクを否定
総裁会見では、個人消費が弱いなかで、景気腰折れを招く懸念を示す質問が相次いだ。それに対して植田和男総裁は「賃金・物価が上昇している中での動きであり、経済・物価がこれを契機に減速するとは考えていない」と述べた。
「金利ある世界」と言われる現状は一方で、「金利が極めて低い世界」でもある。予想物価上昇率を差し引いた実質金利のことだ。予想物価上昇率は企業と家計でばらつきがあるが、日銀試算の1年金利を見れば、大規模異次元緩和が繰り広げられてきた時期よりも低い。「借り得」の状態だといえる。
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