企業・家計の円安への悲鳴を受け、金融政策要因で円安が再燃することは避けたかった日銀。だが、市場にはタカ派姿勢がサプライズとなり、不運も重なった。
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植田日銀が7月31日の金融政策決定会合で、追加利上げを決定した。上げ幅はわずか0.15%だが、日経平均株価は8月5日に一時4700円超の暴落を演じた。いくつかの要因が重なったものだが、市場では「植田ショック」とも称される。
ただ、日銀発のショックとして定着するかは、今後の経済・物価の動向次第だ。「インフレファイター」を鮮明にした植田日銀の勝算を占ってみる。
人が変わったような「タカ派」会見が引き金に
まず、日銀の政策決定と市場反応を時系列で整理しよう。
日銀が利上げを決定した7月31日の日経平均終値は前日比575円87銭高だった。直前の観測報道もあり、利上げはほぼ織り込み済み。事前に株を売った向きが材料出尽くしで買い戻したとみられる。ドル円は決定前後でやや上下したが、1ドル=152円台を維持した。
この時点で利上げ決定は特段の波乱要因ではなかった。
雲行きが変わったのは午後3時半から始まった植田和男総裁の会見だった。これまでハト派的な印象が強かったが、この会見では「まるで人が変わったかのようなタカ派」(大手邦銀)に転じたのだ。
特に「0.5%は(壁として)意識していない」(植田総裁)などのフレーズは「断続的に利上げする印象を与えた」(同)とされ、会見中から円高が加速した。
そして、翌日から日経平均は下げ足を速めた。8月2日発表の7月の米雇用統計が弱く、「アメリカ経済の不況入りへの懸念が広がった」(外資系ファンド)ことが日経平均の8月5日の暴落を助長した。このほか、「今年に入って高騰したツケが一気に表面化した」(同)との指摘も聞かれる。
まとめると、植田総裁のタカ派会見に米雇用統計の不振、高騰した日経平均の水準調整が偶然にも重なったと言えるだろう。
ただ、複数の要因が重なったとは言え、植田総裁の会見が暴落につながる最初の「引き金」になったのは間違いない。その意味で「植田ショック」と呼ばれるのはやむを得ない。
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