日本株の急落はアメリカ経済の先行き懸念が思ったより早く広がったほか、それによる望まない形での円高ドル安が始まった不運の結果だ。
「令和恐慌」「植田ショック」「円安バブル崩壊」、市場では次から次へと2024年8月上旬の株式市場に起きた悲劇を形容する言葉が相次いだ。8月5日の東京株式市場で日経平均株価は前週末比4451円(12%)安の3万1458円で終え、過去最大の下げ幅となった。
下落率でも歴代2番目だ。下げ幅で歴代3位は8月2日の2216円安で、2営業日連続で歴史的な下げを記録したことになる。2024年に入ってからの上昇分は8月初頭ですべて帳消しになってしまった。今後、さらなる下落も予想されることから金融界が阿鼻叫喚しているのは無理からぬことだ。
急激な円高ドル安の責任を日銀に求める声
株価の急落が続く中で、各種報道ではその要因についてさまざまな解説が出された。その中で、最も見られたのが「急速な円高ドル安で輸出企業の業績が押し下げられることで輸出関連株を中心に投げ売りされた」というものだ。その円高ドル安要因は「日本銀行が利上げしたうえに、アメリカの経済市場が想定以上に悪く、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の急速な利下げが意識されたから」との説明が続く。
急速な円高ドル安が意識されたのは否定できない。日経平均が急落した期間中は台湾の代表的な株価指数である加権指数や、韓国のKOSPI(韓国総合株価指数)も大きく下げている。ただ、8月5日に加権指数は8.35%、KOSPIは同8.77%それぞれ下落したのに対し、日経平均が12.4%と下落率は約4ポイント大きかった。
ニュー台湾ドルや韓国ウォンは対アメリカドルではこの1カ月で急激な大変動はなかったが、日本円は7月上旬の1ドル=161円台から8月5日には一時141円台までの急激な円高ドル安が進んだ。株式市場の下落率が他国より大きかった理由は、為替の変動にも求められるだろう。
市場関係者の中からは円安の恩恵を象徴する事例が直近あったことも、投げ売りに影響したとの声もある。日本の製造業を代表するトヨタ自動車が8月1日に発表した第1四半期決算(4~6月)では、販売台数が減少したものの前年同期比1875億円の増益を確保した。期中の平均為替レートは前年同期が1ドル=137円に対し今年は1ドル=156円と、為替変動影響で3700億円の増益効果があったと説明されている。急速な円高ドル安で、円安による増益効果が打ち消されることをイメージしやすかったのだ。
以上のことから、株価の急落原因を円高に求め、さらにその「犯人捜し」の一環として7月31日に3月以来の利上げを決定し、年内の追加利上げの可能性も示唆してタカ派に転じたとみられた日本銀行と植田和男総裁に責任を求める見方も噴出。「植田ショック」と題する報道も出た。
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