株価急落の悲劇と望まぬ形で進む円安是正の衝撃 決して日銀の利上げがその始まりではない

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とはいえ、円高ドル安傾向は日銀が7月の金融政策決定会合で利上げする前から出始めていた。傾向は7月11日に発表されたアメリカの6月CPI(消費者物価指数)でインフレの減速が確認されて、FRBの早期利下げ予想が広がり、さらに財務省がそれに合わせて円買い為替介入を実施したことに始まる。日経平均の下落基調も同時期からだ。

その後もアメリカで発表される経済指標では景気減速が意識される内容が続いた。それに合わせてFRBの9月利下げ予想がコンセンサスになっていったほか、アメリカ長期金利も低下し、円高ドル安が進行した。その中で、日銀は7月末に利上げを決定した。

市場では9月利上げの予想が多かったため、ここで日銀利上げが円高要因としてさらに加わったが、それまでに対ドルではすでに9円の円高が進んでいた。円高基調に入ったのは日銀が主因ではないのだ。

日銀には想定外のアメリカ経済への懸念

問題は日銀が利上げを決定した後に、おそらくは日銀が想定していなかった事態が連続して発生してしまったことだ。それは、アメリカ経済の減速懸念が想定以上に広がったこと、またそれに伴い円高ドル安がさらに加速してしまったことだ。

日銀が利上げを決定し、植田総裁の会見が終わって半日後に、FRBのパウエル議長は同日に行われたFOMC(連邦公開市場委員会)後の記者会見に臨んだ。そこで9月の利下げに言及した。当初は9月に向けて明確なフォワードガイダンスを求めた市場に配慮したものと受け取られた。

しかし、その後に発表された新規失業保険申請件数やISM製造業景況指数で市場予想よりも悪い結果が続出。そのため、「パウエル議長が9月利下げなど早期の利下げに言及したのは、FRBがアメリカ経済が悪化することを知っていたからではないのか」との疑念が出始めた。

そして8月2日に発表された7月雇用統計では、失業率が景気後退を示唆するサーム・ルールに当てはまる水準に上昇。「FRBの利下げ姿勢はやはりアメリカ経済が悪いから」との懸念に拍車をかけた。

このことからアメリカの景気悪化懸念によるアメリカ株安、さらにFRBの年内利下げの加速想定からドル安円高につながった。雇用統計発表後に1ドル=149円台から一気に147円台まで円高が進行。週末に146円台まで進み、5日の東京市場でさらなる円高株安につながってしまった。

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