水産業者、値崩れ恐れ在庫積み上がる苦しい実態 中国が水産物禁輸でも、国内向け販売は様子見

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すでに海産物の価格は昨年を下回っている。道によると、キンキ、サメガレイ、ウニなど道産の高級魚介類の販売価格が前年比で4~5割程下落していることがわかったという。

また、水産庁によると道産のホタテは7月中下旬の1キロ当たり平均195円から8月には173円に下落。道産のナマコは昨年同時期は1キロ4500円だったが、4000円まで下がったという。今後、在庫が大量に放出されれば、値崩れは歯止めがきかなくなる。

そんな厳しい状況にもかかわらず、ネット上には「これまで中国にばかり輸出して、国内の仕入れ業者を相手にしてこなかったのに、今度は助けを求めるなんて虫が良すぎる」「庶民からすればまだ高値」といった声が上がっている。しかも、輸出を促進してきたのは国や道である。問題の根は深い。

海の異変による不漁も打撃

問題は中国の禁輸だけではない。海水温上昇に象徴される海の異変で、サンマやイカは記録的な不漁が続いている。その象徴がイカだ。道南沖では、この夏の海水温が昨年より約3度も高く、イカ漁はサッパリだ。2013年には2万2155トンあった漁獲量が2022年は3106トンまで激減している。

去年は豊漁だったサケはどうか。道東で取材中、こんな話を耳にした。

「今年は(春から夏にかけて獲れる)トキシラズがさっぱりだった」

釧路管内のトキシラズを含むシロザケの水揚げ量(速報値)は、不漁だった昨年よりも4割近く少ない約60トンだった。過去4年で最低だ。

釧路市の和商市場の売り場で話を聞いても「今年は少なかったね」とポツリ。

釧路の和商市場で売られていた魚(筆者撮影)
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