有料会員限定

天然クロマグロ漁獲枠拡大やエサ代高など逆風に DX活用で「養殖マグロ事業を伸ばす」双日の挑戦 

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小
長崎県松浦市鷹島の沖合1~2キロメートにある生け簀で、双日ツナファーム鷹島は約4万尾のマグロを養殖している (写真:双日)

九州北西部、伊万里湾口に浮かぶ鷹島。長崎県松浦市に属するが、2009年に鷹島肥前大橋が開業してからは佐賀県唐津市と地続きとなり、車での往来が可能になった。トラフグの養殖でも知られるこの島の沖合1~2キロメートルで、48台の生け簀を構えるのが双日ツナファァーム鷹島(以下、ツナファーム)だ。

「地元の漁協の理解も得て、17年前に長さ40メートル・幅80メートルの生け簀4台からクロマグロの養殖を始めた。いまでは約4万尾を養殖している」と話すのは、ツナファームの大西啓之社長。双日で長年、魚のトレーディングに従事していた水産のプロだ。

双日はマグロの輸入を30年以上手掛けているが、資源の枯渇が叫ばれて漁獲規制が厳しくなる中、マグロの安定供給を目指して2008年に養殖事業に参入した。全国で適地を探してたどり着いたのがこの鷹島だったという。

「もともとトラフグの養殖が盛んな地域だが、新しい漁業も必要だと漁協の組合長の理解を得て事業を始めさせてもらった」と大西社長は話す。

ツナファームから出荷されるマグロの6割は、長崎県の五島や対馬の漁業者が巻き網漁で獲った2キログラムほどの天然幼魚を3~4年ほどかけて養殖したものだ。3割は和歌山県串本町の漁業者が釣った稚魚から育てたもの。

また、SDGsの観点から人工ふ化させた稚魚から育て、親魚になった魚から採卵・ふ化した稚魚を使った「完全養殖」を好む顧客もいる。ツナファームでは、豊田通商グループのツナドリーム沖縄から稚魚を仕入れ、4~5年かけて養殖するという。

マグロを獲るのは漁師でなくダイバー

生け簀でマグロを獲るのは漁師ではなく、潜水服を着たダイバーたちだ。系列のマリンフーズを介して専門店や量販店などから前日に注文が入り、50~60キログラムのクロマグロを生け簀から獲る。生け簀によっては150キログラムを超える大型のマグロも養殖されている。

ダイバーたちは生け簀に潜り、電気モリでマグロの背中を突く。背骨が骨折して動けなくなったマグロを手早くクレーンで吊り上げ、船上で血抜き、エラ腹の除去作業を手際よく進めていく。船上に上げて1分半~2分程度で作業を終え、氷を入れた魚艙(ぎょそう)に保管して陸の加工場に運んでいく。

「大事なのは、マグロを暴れさせないこと」と大西社長。マグロが暴れると、体温が上がり、乳酸が体内にたまる。すると筋肉のタンパク質が変質して「焼け」という現象が起きる。焼けが起きると色味が悪くなり、鮮度も悪くなるのだ。

ダイバーが生け簀に潜り、電気モリでマグロを捕獲する(記者撮影)
次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD