生成AIも結局は大手テック企業が支配するのか オープンAI×MS連合vs.グーグル、そして……

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注目すべきは、ChatGPTやBardがソースコードはもちろん、トレーニングデータやパラメータも完全非公開としているのに対し、LLaMAのコードはオープンソースとして公開されている点だ。これは筆者の推測であるが、メタの狙いは「大規模言語モデル版アンドロイド」になることではないだろうか。

スマートフォンやタブレット向けのプラットフォームとして世界シェア1位を誇るアンドロイドは、グーグルが2007年にオープンソースとして発表した。そうすることで、多くのモバイルデバイスメーカーや開発者がアンドロイドを使って開発できるようになった。その結果、デバイス数が増加し、ユーザーが拡大した。

今後爆発的に増えると予想される、大規模言語モデルをベースとしたサービスのプラットフォームとしてのポジションを確立するためには、LLaMAをオープンソースとして公開することで開発者コミュニティを味方につけ、エコシステムを広げるのが近道――メタはこう考えたのではないだろうか。

今後は企業買収も活発に

最近ではグーグルが、オープンAIのライバルと目される生成AIスタートアップのAnthropic(アンソロピック)に約3億ドルを出資したことが明らかになっている。

アンソロピックはオープンAIの元従業員6人が立ち上げた会社で、CEO兼共同創業者のダリオ・アモディ氏はオープンAIで研究部門の責任者を務めていた。

AWSも、2023年2月に、多数の機械学習アプリの開発ツールをオープンソースとして提供しているハギング・フェイスとの提携強化を発表している。

大手テック企業は資本力やコンピューターリソースはもちろん、言語モデルをより洗練されたものにする専門人材と市場経験を持つ。これまではAIスタートアップは出資を受けるにとどまっているが、今後は買収されるケースも出てくるだろう。

そうなれば結局は、大規模言語モデルも大手テック企業が支配することになっても驚きはない。

「世界にコンピューターは5つあれば足りる」

これはクラウドが姿を見せ始めた2006年11月に当時のサン・マイクロシステムズ幹部が発した言葉である。現在のクラウドの状況を見事に予見した先見の明には驚くが、同様に、「世界に大規模言語モデルは5つあれば足りる」という状況が訪れる可能性は決して低くはない。

城田 真琴 野村総合研究所 DX基盤事業本部 兼 デジタル社会研究室 プリンシパル・アナリスト

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しろた まこと / Makoto Shirota

2001年に野村総合研究所にキャリア入社後、一貫して先端ITが企業・社会に与えるインパクトを調査・研究している。総務省「スマート・クラウド研究会」技術WG委員、経済産業省「IT融合フォーラム」パーソナルデータWG委員、経産省・厚生労働省・文部科学省「IT人材需給調査」有識者委員会メンバー等などを歴任。NHK Eテレ「ITホワイトボックス」、BSテレ東「日経プラス10」などTV出演も多数。著書に『FinTechの衝撃』『クラウドの衝撃』 『エンベデッド・ファイナンスの衝撃』『決定版Web3』(いずれも東洋経済新報社)、『デス・バイ・アマゾン』(日本経済新聞社)などがある。

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