日本が欧米に比べて「インフレ耐性」が低い理由 インフレ下で家計の負担が大きくなる構造

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日本の金融資産構成は、預貯金の割合が半分以上を占めていて、有価証券の割合は相対的に低い。このことが、欧米の家計のインフレ耐性を強め、逆に日本の家計のインフレ抵抗力を弱めることにつながっている。日本は、デフレ時代はそれでよかったのかもしれないが、今後は不利になっていく。

日本の家計は「円資産」信仰が強い

もう1つ、欧米の金融資産のインフレ耐性を強めているのは、海外資産への投資だ。日本では、資産運用をするときは、円建て(自国通貨建て)のほうが安全と考える。外貨は、円高になると目減りすると敬遠する人が多かった。

しかし、インフレのリスクが高まると、事情は変わる。インフレと円安という変化がセットになってやってくるため、為替変動のリスクを回避するには、ドルもユーロも円もまんべんなく保有しているほうがよい。ドル安のときには、円高・ユーロ高になり、全体では為替変動がならされる。逆にドル高のときは、円安・ユーロ安でやはりメリットとデメリットが相殺し合う。

資産運用の世界では、世界中の金融資産をまんべんなく保有するほうが、リスクを相対的に低下させて、高いリターンを追求できると考える。だから、自国通貨建ての資産に偏ることを、「ホームバイアス」と呼んでいる。ホームバイアスはないほうがよいのに、どうしても各国ともそうしたバイアスがかかる。

特に、日本の家計はその傾向が強い。ホームバイアスが低い欧米のほうが為替変動に強く、インフレが起きたときもその利上げをする国々の通貨が高くなる恩恵を得やすくなる。自国の財政が悪化して、金融抑圧の政策を始めたとしても、海外資産への分散をしていれば、相対的に自国通貨の減価リスク、インフレリスクに巻き込まれずに済む。

さらに、欧米と日本の違いとして、富のクリエーションの力量の差もある。ケインズは、新しく富を築く人にはインフレが有利だと説いた。昔築いた富は減価するので、次々に新しい富を生み出すことが、インフレ時代に生き残るすべだ。

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