日本が欧米に比べて「インフレ耐性」が低い理由 インフレ下で家計の負担が大きくなる構造
ところが、コロナ禍の2020~2022年はこの流れが激変する。特に、2022年は各国で久々の大幅なインフレ加速を見た。IMFの経済見通しでは、たった3年間でインフレ調整が平均マイナス13.2%も進む見通しになっている(日本を除く、日本はマイナス5.2%の見通し)。
うがった見方をすると、各国がコロナ禍で積極財政に打って出られたのは、財政負担がインフレ課税でいくらか軽くなったからではないかと見ることもできる(これは完全な後講釈かもしれないが)。
それに比べると、従来の日本はデフレ、または物価上昇がほとんど起きない中で、財政出動を活発に行ったために、現在のような過重負担になった。日本は、インフレ課税が少なかった分、余計に低金利に依存するかたちになる。これが、金融抑圧の背景構造だとも言える。
欧米人は、いかにして資産を防衛しているのか?
ここで、1つ疑問が湧くのだが、もしも、欧米のほうが、インフレ調整圧力が強いのならば、日本以上に金融資産の目減りが大きくなり、国民の間に不満が高まるのではなかろうか。また、欧米のほうが家計は不利に置かれていることをどう考えるべきだろうか。
その点についても、ケインズの考えほうが役に立つ。貯蓄階級はインフレで損をするが、実業階級は損しない。実業階級は、借金をして事業で利益を得ている。この事業利益はインフレ抵抗力が高い。企業は価格転嫁を進めて、インフレ時には利益水準をインフレに同調できる。
ならば、家計も株式を保有して、事業利益の分配を受けられるようにすると、いくらかインフレ抵抗力は高まるはずだ。貯蓄階級が実業階級のメリットを取り込むのである。家計金融資産に占める株式など有価証券の保有割合は、日本よりも欧米のほうが高い。
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