航空燃料「SAF」、開発現場が迎える生みの苦しみ 2030年導入へ政府は石油会社に供給義務づけ

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先陣を切るのはコスモ石油や日揮ホールディングスなどが共同出資する「サファイア・スカイ・エナジー」だ。コスモ石油の堺製油所内で建設しているSAFプラントは2023年6月に着工し、2024年度下期にも運転開始する。

コスモ石油の堺製油所内で2024年度下期に稼働予定のSAFプラント(画像:コスモ石油)
 

廃食用油を原料としたSAFを年間3万キロリットル製造する計画だ。コスモ石油は三井物産が調達するエタノールを原料として2027年度にも新たなSAFプラントを稼働させ、2030年までに合計30万キロリットルのSAFを製造する目標も掲げている。

課題は廃食油の調達だ。国内で発生する50万トンの廃食用油のうち、国内の燃料原料に回るのは1万トンにすぎない。一方で12万トンが海外に輸出され、Nesteがこの一部を原料にしてSAFを製造し、日本に輸入されている現実がある。廃食用油は世界で争奪戦になっており、輸出価格は2年前の約2倍に高騰、国内取引価格もつられて高くなっている。

原料をどれだけ担保できるかが国産化のポイント

「廃食用油の調達には非常に多くの課題があるが、年産3万キロリットルのプラントに必要な量であれば現実的に調達可能な水準で、確実に達成したい」と、サファイア・スカイ・エナジーの山本哲COO(最高執行責任者)は話す。

輸出に流れる12万トンを主な標的に、原料の3万キロリットル強を確保していく。家庭で廃棄されている廃食油も発掘の余地があるという。「原料をどれだけ安定して担保できるかは、国産SAFの大きなポイントだ」と山本氏は言う。

元売り最大手のエネオスは、2023年10月に操業を停止する和歌山製油所で廃食用油を原料とした年産40万キロリットルのSAF製造を2026年から始める計画だ。国内シェアの半分を取りにいくという。地元の雇用維持の面でも期待が大きい事業になる。

国内最大規模の製造になるため、廃食用油の調達は困難を極めることも予想されるが、「不足する分は協力会社のフランスのトタルエナジーズの調達網を活用して調達を進める」とバイオ燃料総括グループの石川香織氏は話す。

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