航空燃料「SAF」、開発現場が迎える生みの苦しみ 2030年導入へ政府は石油会社に供給義務づけ

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次々に計画が立ち上がる国産SAFの製造体制だが、需要見通しも供給計画もほとんどまだ机上の計算にすぎない。国産SAF製造に向けた官民協議会のあるメンバーは、「協議会では量の話ばかりしていて、価格の話がまるで進んでいない」と明かす。

現在の航空燃料は1リットル当たり約100円。一方、国内でのSAFの取引価格はその3~5倍(原液ベース)に上るという。航空会社のコストのうち30%を燃料が占めるというが、「利益が吹き飛ぶまでは耐えられない。いつまでも高価なSAFを買い続けることはできない」(エアライン幹部)というのが本音だ。

出光興産は、製造コストで「1リットル当たり100円台を目指す」とし、コスモ石油も「現在国内で取引されている価格以下での提供を目指す」とするが、実際のエアラインとの価格交渉はこれからだ。

まだ存在しない国産SAFの価格を、10~20年以上先の世界の需給見通しも踏まえて決めることなど不可能だ。しかし、「いくらで売るのか」「いくらで買うのか」が不透明なまま、プラント製造の投資判断が遅れれば、資材高の中でそれだけ建設コストが膨らみ、さらにSAF価格が高くなるという悪循環に陥りかねない。

欧米で打ち出されたSAFの支援政策

カギを握るのは、やはり政府の支援策だ。

アメリカでは「SAFグランドチャレンジ」のもと、政府の目標として軍事部門を含むすべての航空燃料を2050年までにSAFに置き換える方針だ。まずは2030年のSAF供給量を年間30億ガロンとする目標を掲げる。この目標達成に向け、IRA(インフレ抑制法)による補助金や税額控除、RFS(再生可能燃料基準)などの枠組みで、アメリカ国内で生産・供給されるSAF価格を実質ケロシン並みに抑える政策をとる。

ヨーロッパでは2050年までに段階的に70%までSAFの混合を義務づけるほか、化石燃料への課税を強化する一方、SAFの税率は据え置く。空港によっては1リットル当たり37円を支給する制度もある。

日本では8月23日に開かれたGX実行会議で、GX分野に総額2兆円規模を投じる2024年度予算の概算要求案がまとめられ、国産SAF製造に向けた支援が事項要求として盛り込まれた。

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