航空燃料「SAF」、開発現場が迎える生みの苦しみ 2030年導入へ政府は石油会社に供給義務づけ

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政府の支援額は国産SAFの取引額を大きく左右する要素だが、「現段階で支援額が『いくら』とは示せない」と資源エネルギー庁の担当者は語る。

「2030年時点でどれくらいの価格なら競争力があるのか、見極めている段階だ。海外の支援制度とSAF技術の進み具合を踏まえてどれくらいの価格帯まで落ちていくのか。それを踏まえて日本の企業が戦っていくための支援策をその都度打ち出していく」(同担当者)

一方、SAFの価格の議論については、「(供給側と需要側が)お互いに主張をしていると、平行線のまま投資が進まない。需要側とどこまで歩み寄れるか、製造側にも情報を出してもらわないと判断ができない。そのバランスを調整していく作業が必要。このハンドリングは今年度中の重大ミッションと認識している」(同)という。

「航空運賃に転嫁していくことは避けられない」

官民協議会の参加メンバーの一人は、「航空会社は容認しにくいかもしれないが、航空運賃に(SAFのコストを)転嫁していくことも将来は避けられないのではないか」と話す。

さらに、製造者側からはこんな声もあがる。「SAF製造では一定のCO2排出が避けられない一方、排出削減効果を上流と下流で配分する枠組みの構築が必要だ。上流の供給側にもCO2削減効果を取り込める仕組みが求められる」(サファイア・スカイ・エナジーの山本COO)

桜美林大学の戸崎肇教授(航空政策が専門)は、こう指摘する。

「今後はSAFをめぐる国際競争が激しくなり、海外の既存メーカーは市場を拡大しながら価格の主導権を握り続ける。その中で、国産SAFはリスクがつきまとう事業であることは間違いない。供給が追いついた頃に価格が下落し、品物がだぶつくのは最悪のシナリオ。販路開拓、価格の安定化などを含め政府の主体的支援が求められる」

国産SAFの誕生までには、まだ紆余曲折がありそうだ。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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