航空燃料「SAF」、開発現場が迎える生みの苦しみ 2030年導入へ政府は石油会社に供給義務づけ

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一方、日本政府は「GX基本方針」で2030年時点のSAF使用量について、「本邦エアラインによる燃料使用量の10%をSAFに置き換える」と明記。2022年12月には改正航空法に基づき、SAFの導入促進などをうたう「航空脱炭素化推進基本方針」が示された。ただ、航空業界は「この数値はあくまでも供給環境が整ったうえでの目標との認識」(エアライン担当者)で、「義務化」という表現に神経をとがらせる。

ANAは2020年10月、フィンランドのSAF製造大手のNesteと提携し、伊藤忠商事を通じて羽田や成田空港発の定期便でSAFを導入して以降、使用量を拡大している。2030年度までに10%、2050年度にはほぼ全量をSAFに置き換える計画だ。日本航空(JAL)も2050年のCO2排出ゼロに向け、2025年度に全燃料の1%、2030年度に10%をSAFに置き換える方針だ。

「安定調達に国産SAFは不可欠だ」

供給側でも「義務化」の動きは進んでいる。国は「エネルギー供給構造高度化法」の告示を2023年度中にも改正し、石油元売りに2030年10%に見合う供給目標を設定する。資源エネルギー庁の試算では、国内のSAF需要は2025年から徐々に増え、2030年には171万キロリットルと「全体の10%」に置き換わる。これに対して、供給量は同年に192万キロリットルと需要量を上回り、海外エアラインに販売できる見通しとしている。

2030年までのSAFの利用量と供給量の見通し

Nesteと共同でいち早くSAFの調達に乗り出した伊藤忠は、前述の通りANAの定期便に国内ではじめてSAFを供給した。さらに2022年には日本での代理店契約を結び、国内で海外エアライン向けにもSAFを提供している。2023年度中に関西空港でも供給を開始する予定だ。

「ただ、SAFをすべて輸入に頼るとなると、石油ショックのようなことが起きて供給が途絶えると困る。安定調達に国産SAFは不可欠だ」と伊藤忠の石川路彦リニューアブル燃料ビジネスユニット長は言う。エネルギー安全保障の観点からも国産SAFの製造は欠かせない。

国内でガソリンをはじめとした燃料油需要が年に1%超減っていく見通しの中、石油業界も次世代航空燃料の開発にしのぎを削る。SAFは製油所の桟橋や配管設備などをそのまま活用できることもあり、統廃合が進む製油所の跡地を「カーボンニュートラル基地」に転換していくうえで重要な事業になる。

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