航空燃料「SAF」、開発現場が迎える生みの苦しみ 2030年導入へ政府は石油会社に供給義務づけ
一方、コスモの計画に比べ10倍以上の製造となるだけあって、事業リスクも高い。
「2030年度までの需要想定が国から出ているが、本当にその通りに伸びていくのか、各年度の精緻な推移を示してもらいたい。供給サイドが負うSAF生産の義務に比べ、需要サイド(エアライン)の義務化やインセンティブがまだ不透明なところがある。はしごを外されないような制度設計をお願いしたい」と、石川氏は訴える。
出光興産はエタノール原料のSAFを製造へ
廃食用油以外の原料でSAFに取り組む企業も出てきた。出光興産は2026年度からサトウキビなどからつくるエタノールを原料とするSAFの供給を始める。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業に採択され、総事業費457億円(補助額292億円)をかけて千葉事業所に年産10万キロリットルのSAF製造プラントを建設する。
エタノールによるSAF製造は廃食用油のように技術が確立されていないが、廃食用油に比べて安定した調達ができる。「エタノール原料のSAF製造はわれわれの持っているノウハウと親和性が高いのもメリットだ」と、出光興産バイオ・合成燃料事業課の大沼安志課長は話す。
千葉の1号機に続き、中部地区などで2号機、3号機と増設していく計画で、2030年までに50万キロリットルの生産体制を目指す。「未知の原料について複数のサプライヤーを開拓し、輸送体制、受け入れ体制を構築してきた。量の確保に問題はないが、品質面で実務的な協議を続けている」(大沼課長)。
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