スマホ1つでつながる時代、地方大逆転のチャンス 日本が「便利すぎるコンビニ」を乗り越える方法

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成嶋祐介(なるしま ゆうすけ)/一般社団法人深圳市越境EC協会日本支部代表理事。世界の最先端企業1800社とのネットワークを持つ中国テックビジネスのスペシャリスト。中央大学、茨城大学講師などを歴任。 慶應義塾大学法学部法律学科卒業。株式会社成島代表取締役。2019年から深圳市政府公認の深圳市越境EC協会日本支部の代表理事を務める。 全世界の中小企業をつなげることを目指し、情報テクノロジー、通販分野にて日本と中国の橋渡しを行い、世界規模のグローバルECの開発に向けて活動をしている(成嶋氏提供)

成嶋:その「群としての最適化」が、さらに業態の壁を越えて進んでいきます。各店舗の予約状況や来店状況といった情報もシェアされるので、「そちらのお店の空席を、うちが代わりに売りましょうか?」「おたくのタクシーが暇でしたら、うちのレストランとパッケージで売りましょうか?」といった協力関係が起こるんです。それが「ディディ」の事例です。

ディディ(滴滴出行)

中国最大のライドシェアサービス。SDKというオープンインターフェースを通じて地図、交通検索、レストラン検索など多くのアプリと連携しており、「映画+レストラン+ライドシェア」などそれぞれのアプリとの組み合わせによって独自の販売プランをユーザーに提案できる。このSDKのインターフェースを提供することで、非競合関係にある企業同士のパートナーシップが拡大している。

尾原:このディディのSDKもすごい仕組みですね。あるレストランの予約が埋まっていないとして、一方でディディのライドシェアも利用が伸び悩んでいる。そうすると「レストラン+シェアライド」を自動でパッケージ化して、「今日、このレストランを予約してくれた人は、駅からのタクシー代を無償にしますよ」と販売することができる。

成嶋:それぞれのサービスに対していちいち確認を取らなくても、「群としての最適化」が自動で行われます。

「群としての最適化」で、業態を超えてサービスをパッケージングすれば、付加価値が上がるので価格も上げやすくなる。結果、レストラン、ディディ双方でシェアする収益も上がる、という仕組みになっています。

便利すぎる「コンビニ」が進化を阻害している?

尾原:ARグラスなどやスマート駐車場などの「個としての最適化」から、サイケイやディディなどの「リアルのAPI化」、そして「群としての最適化」まで。中国テック企業における進化の流れが、成嶋さんのお話を聞きながら1本のストーリーとして理解できました。

一方でふと思ったのが、日本ではなぜこのような進化が起きないかということ。その要因は、私は「コンビニ」にあるのではないかと思うんです。

成嶋:コンビニ、ですか?

尾原:日本においてはオフラインの世界でコンビニが異常発達していて、さまざまなサプライヤーと接続するハブとなり、私たちの生活を知らない間にスマート化してくれている。もちろん、それはいいことなのですが、実はアフターデジタルの文脈で考えると、その便利さがフロッグリープ(蛙がジャンプするような非連続の進化)を阻害している可能性もあります。

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