スマホ1つでつながる時代、地方大逆転のチャンス 日本が「便利すぎるコンビニ」を乗り越える方法
成嶋:その「群としての最適化」が、さらに業態の壁を越えて進んでいきます。各店舗の予約状況や来店状況といった情報もシェアされるので、「そちらのお店の空席を、うちが代わりに売りましょうか?」「おたくのタクシーが暇でしたら、うちのレストランとパッケージで売りましょうか?」といった協力関係が起こるんです。それが「ディディ」の事例です。
ディディ(滴滴出行) 中国最大のライドシェアサービス。SDKというオープンインターフェースを通じて地図、交通検索、レストラン検索など多くのアプリと連携しており、「映画+レストラン+ライドシェア」などそれぞれのアプリとの組み合わせによって独自の販売プランをユーザーに提案できる。このSDKのインターフェースを提供することで、非競合関係にある企業同士のパートナーシップが拡大している。 |
尾原:このディディのSDKもすごい仕組みですね。あるレストランの予約が埋まっていないとして、一方でディディのライドシェアも利用が伸び悩んでいる。そうすると「レストラン+シェアライド」を自動でパッケージ化して、「今日、このレストランを予約してくれた人は、駅からのタクシー代を無償にしますよ」と販売することができる。
成嶋:それぞれのサービスに対していちいち確認を取らなくても、「群としての最適化」が自動で行われます。
「群としての最適化」で、業態を超えてサービスをパッケージングすれば、付加価値が上がるので価格も上げやすくなる。結果、レストラン、ディディ双方でシェアする収益も上がる、という仕組みになっています。
便利すぎる「コンビニ」が進化を阻害している?
尾原:ARグラスなどやスマート駐車場などの「個としての最適化」から、サイケイやディディなどの「リアルのAPI化」、そして「群としての最適化」まで。中国テック企業における進化の流れが、成嶋さんのお話を聞きながら1本のストーリーとして理解できました。
一方でふと思ったのが、日本ではなぜこのような進化が起きないかということ。その要因は、私は「コンビニ」にあるのではないかと思うんです。
成嶋:コンビニ、ですか?
尾原:日本においてはオフラインの世界でコンビニが異常発達していて、さまざまなサプライヤーと接続するハブとなり、私たちの生活を知らない間にスマート化してくれている。もちろん、それはいいことなのですが、実はアフターデジタルの文脈で考えると、その便利さがフロッグリープ(蛙がジャンプするような非連続の進化)を阻害している可能性もあります。