中国でコストパフォーマンスを重視した新たな食材・日用品の小売りチェーンが成長している。3年に及んだ新型コロナウイルス禍やその後の景気減速のため、名を捨てて実を取る消費者が増えているためだ。中国経済が消費面で「日本化」してきた表れと言えるが、担い手企業の新陳代謝により新たな商機も生まれている。
中国・上海市にある新興食品スーパー、鍋圏(グオチュエン)食品の店舗は、まるで火鍋専門のコンビニのようだった。100平方メートル弱に満たない売り場には、肉・野菜・スープなど食材に加え、鍋やコンロまで火鍋に必要なすべてがぎっしり並んでいる。
「中国の消費者は近年、自宅で食事する傾向が強まっている。当社は小区(団地)のセントラルキッチンになって需要に応えたい」
2017年に河南省鄭州市で1号店を開いた鍋圏の党瑋(とう・い)・最高執行責任者(COO)はこう語る。中国の火鍋チェーンでは海底撈(ハイディラオ)が有名だが、鍋圏はその「DIY版」と言える。
もともと火鍋代が海底撈の6割ほどで済むコスパの高さが売り物だったが、そこにコロナ禍による飲食店の営業規制という追い風が吹いた。主にフランチャイズ方式で展開する店舗は2023年12月末現在、中国全土で1万307店に広がった。
それに先立つ同年11月には香港取引所への上場を果たし、同年12月期は2億6340万元(約55億円)の純利益を確保した。
内陸部の大都市がターゲット
現在は上場時に得た資金で食材工場のほか、冷凍倉庫などコールドチェーン(低温物流)の整備を進めている。店舗展開は北京、上海など沿海部の超大都市ではなく、鄭州など内陸部の大都市に重点を置く。内陸部は消費者の購買力がやや低く、鍋圏のコスパの高さが生きると判断しているためだ。
コロナ禍が収束し、火鍋店の営業が正常化した2023年12月期は1店舗当たりの売上高が減少した。このためアイスクリームやビールの取り扱いを始め、火鍋専門から総合的な生鮮食品スーパーに脱皮する戦略を加速している。党氏は「小区の生鮮食品ニーズにワンストップで対応できる店に発展させる」と意気込む。
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