だから孫正義はインド人COOを後継指名した

前参謀がトップ人事の真相を読む

「300年続く企業をつくりたい」という孫社長の発言を受け、私はローマ帝国の栄枯盛衰を研究したことがある。そのとき、世界に広がる「普遍帝国」をつくったローマは、人種、国境を越えて、優秀な人材に元老院議員など指導者層への門戸を開く文化を持っていたことを知った。この「寛容」の文化がローマにベスト&ブライテストを集めたのである。

ニケシュはインド人である。ソフトバンクは35年前、福岡県で始まった企業だ。とすれば、「トップは日本人で」と考えがちである。ところが、後継者候補をインド出身のニケシュにした事実によって、これからソフトバンクは人種の枠を超え、世界からベスト&ブライテストが門を叩くようになるに違いない。

「六韜三略」から見る「プレジデント」を譲る意味

第1に目標規模の世界企業をマネジメントした経験、第2に世界のベスト&ブライテストを集めるためのシンボルとして、ニケシュの指名は考え抜かれた帰結だろう。そのニケシュに、孫社長はずっと自らのタイトルだったPresident & CEOのうち、Presidentをニケシュに譲る。

孫社長は言い切った。「上場以来初めて、Presidentのタイトルを譲る。私がCEO & Chairman、彼がCOO & Presidentという立場で、一緒にソフトバンクの第2のステージに挑戦するというかたちになります」。

名軍師、太公望の著と言われる「六韜三略」に次の一説がある。「禄を以て人をとれば人尽くすべし。・・国を以て天下をとれば天下つくすべし」。

禄(報酬)で人をとれば人は一所懸命つくす。だが、国を任せるような地位をもって人を取れば、天下をとることができるというのだ。人間は言葉に縛られる。政治家も「総理」と呼ばれていくうちにだんだん「総理」らしくなっていくといわれる。ニケシュの現時点での評価がどうであろうと、「プレジデント」と呼ばれていくうちに、ソフトバンクの「後継者候補」の求心力は高まっていくにちがいない。

2006年のボーダフォン日本法人買収による携帯電話参入から九年。孫社長は「自分の頭と時間の90%以上を通信事業に集中してきた」。だが、ソフトバンクという会社は、もともと米ヤフーなどネット分野の「目利き」として世界的評価を受けてきた。

孫社長がイメージする“ソフトバンク2.0”とは、ソフトバンクが通信のインフラを始める前の、インターネットに集中的な投資を行っていた「インターネットのソフトバンク」に再び戻ることだ。そして、そのときの天下とは、日本でなく、世界である。孫社長は「世界をとる」ために、ニケシュに「プレジデント」を譲り「後継者候補」としたのである。

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