カナダ山火事、現地在住ライターが見た一部始終 現場は自宅の10キロ先、街は一面、煙で真っ白に

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火災発生時の8月17日は、最近ではまれに見る強風であったことも、山火事がここまで急速に拡大した要因だ。同僚の多くが「まさか火の粉が湖を飛び越えて来るなんて、誰が予想できた?」と話していたが、まさに「対岸の火事」ではすまない惨事である。

現在の被害状況は、8月23日現在、焼失または損傷を受けた住宅は200件近くにのぼる見込みだ。不幸中の幸いは、州からの迅速な避難命令などもあり、今のところ死者は確認されていない、ということだろう。ただし、ケガ人や行方不明者については公表されていない。

シーズン中のダウンタウンが山火事の影響でゴーストタウン化している(写真:筆者の友人撮影)

20年前の同じ日に大規模な山火事

実はケロウナは、ちょうど今から20年前の2003年8月16日にも山火事に見舞われている。そのときは3万3000世帯に避難勧告が出され、250キロ平米の森林と、240件近くの住宅が焼失するという、今回よりも規模の大きな火災だったようだ。

このときの被害総額は約200万ドル(当時の日本円では約1億6500万円相当。1ドル=82.8円で計算)ともいわれ、つい先日、20周年の記念セレモニーが行われたばかりだった。そんな矢先に発生したのが、今回の山火事だった。

カナダでは山火事は当然のこととして受け入れられており、夏の風物詩のように捉えている節がある。日本人にとっての地震のようなものなのかもしれない。しかし、今回の大規模な山火事は人々に衝撃と悲しみをもたらした。完全な復旧までにはどのくらいの月日を要するのだろうか。

一方、規模が大きい割に死者が出ていないのは、州や国の迅速かつ的確な対応の賜物であろう。避難区域の頻繁なアップデート、および避難命令は明瞭だった。また、早い段階で被災地域への渡航禁止令を発表したことも、観光でケロウナを訪れようとしている人々への適切な注意喚起となった。被害を受けた人たちの心境を思うと胸が張り裂けそうになるが、状況に応じた政府の対応には感心させられた。

ケロウナは洗練された街並みが自然にうまく溶け込んだ美しい街だ。1日でも早く本来の美しいケロウナが帰ってくるように、と願わずにはいられない。

村山 葵 カナダ在住ライター

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むらやま あおい / Aoi Murayama

フランス留学、オーストラリアへのワーキングホリデーを経て、2018年よりカナダ・ケロウナに移住。七転八倒の末、2021年永住権を取得。現在はスーパーのベーカリー部門に勤務の傍らライター業も手掛ける。趣味は読書と一人旅。世界100カ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。

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