中間層が「結婚・出産」できない日本の悲しい現実 国民負担率が増えれば増えるほど婚姻・出生が減少

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若者の未婚化の話題でよくいわれるのが、「非正規雇用の増大で結婚できなくなった」というものですが、確かにバブル崩壊から2000年代にかけての就職氷河期にあたる世代にとっては大きな問題だったでしょう。

2000年代当時20代だった若者が、就職先が見つからず、しぶしぶ非正規雇用で食いつないでいるうちに、20年が過ぎ、気が付いたら生涯未婚対象年齢の45歳を過ぎていたというのが今の状況であることは否定できません。

しかし、非正規雇用を減らし、正規雇用を増やせば問題は解決するかというとそれも違います。

ニュースなどでは今でも「非正規雇用が4割」などといわれますが、あれは男女全年齢総数の数字であって、決して現役世代の、しかも結婚適齢期である若者の非正規率ではありません。

2022年の労働力調査によれば、25~34歳での非正規雇用率は男性14.3%、女性31.4%です。労働力調査では未既婚の別はありませんので、これは既婚も含む総数の数字です。もちろん、この男性の14.3%という数字も決して低いものではありません。1980年代は3%台でしたので、それと比較すれば5倍弱にも増えていることは確かです。

1990年と2020年を比較した場合に、男性の非正規雇用率が約5倍弱になっているのと、男性の生涯未婚率が5.6%から28.3%と5倍以上になっていることを照らせば、非正規の増加が未婚率の上昇に直結していると思いたくなるかもしれません。しかし、そもそも生涯未婚率は45~54歳の未婚率であって若者のそれではありません。

初婚年齢の中央値は男女とも20代

世間で「晩婚化」といわれているために誤解がありますが、人口動態調査によれば、初婚年齢の中央値は、2021年でも男性で29.5歳、女性で28.5歳であり、実は男女とも半分以上が20代のうちに初婚しています。

日本における出生の9割も女性39歳までで占められています。婚姻減や出生減を考える際には、この20~30代の若者の置かれている状況が将来を決定するわけで「若者の問題」なのです。

就業構造基本調査に基づいて、最新の2022年と2007年のデータを年齢別に比較したものが以下になります。就業者全体に対する、未既婚・正規非正規の人口割合の増減を示しています。

これによれば、非正規の未婚構成比も確かに25~54歳まで全年齢で2~4%程度増えていますが、それ以上に増えているのが正規の未婚人口の方です。特に、生涯未婚対象年齢である45~54歳と初婚中央値年齢帯である25~29歳の正規未婚構成比が8%近くも増えています。あわせて、正規の既婚人口構成比は全年齢で減少しています。

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