中間層が「結婚・出産」できない日本の悲しい現実 国民負担率が増えれば増えるほど婚姻・出生が減少

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その原因は手取り額の減少です。たとえ額面の年収があがったとしても、税金や社会保険料などがジワジワとあげられていることによって、かえって手取りが減っているという状況がこの20年間続いているからです。

おまけに、コロナ禍以降は物価も上昇しています。若者たちからすれば、「給料があがっているはずなのになぜ毎年生活が苦しいのだろう」と思っていることでしょう。

婚姻数と出生数、それと財務省の出している国民負担率の長期推移の相関を見ると、驚くほど強い負の相関があることがわかります。比較をわかりやすくするために、1995年を1とした経年推移としてあります。

婚姻数も出生数も1995年比で約40%減です。それと対照的に、国民負担率の増加は1995年比で約40%増にならんとしています。婚姻数・出生数とあわせてみると2003年頃を始点として、まるで財務省がよく使う「ワニの口」そのものの形です。

「結婚氷河期」到来?

常雇者平均所得にしても、1995年の水準に届いていません。もちろん、個人レベルでは、毎年多少なりとも給料はあがっているかもしれません。が、その間、社会保険料や消費税があがっています。国民負担率上昇分が給料上昇額を上回って、手取りは逆に減っているという人も多いことでしょう。

現在の未婚化や婚姻減を招いたのは、2000年代の就職氷河期の影響が大きいことは誰も否定しないでしょう。その時代とは違い、現在は若者の人口減少による人手不足で、雇用そのものは確保されています。

しかし、正規雇用であっても満足な年収に届かない若者も多く、加えて、額面の給料が増えても、手取りが減って昔より苦しくなっている現状があります。同じ正規雇用でも今65歳以上の皆婚世代が若者だった頃とは、国民負担が圧倒的に違います。

正規雇用の未婚人口が増えているのはこうした「若者の経済環境の問題」があるからです。このまま「少子化のワニの口」を放置していては、未来に禍根を残す新たな「結婚氷河期」を作ってしまうかもしれません。

若者の結婚が減るだけにとどまらず、多くの若者や子どもたちが将来に夢も希望ももてなくなり、結婚や出産も選択しないという緩やかな滅亡へと向かっていく恐れすらあります。

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荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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