書評家が断言!「読書感想文」で身につくチカラ 「作者の意図を読み取る」本質的な勉強になる

✎ 1〜 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 最新
拡大
縮小

あるいは理系の研究内容を学生さん向けに伝える入門書。絶対に、作者が工夫している点があるはずです。

「なぜこの魚の話から始まっているのか?」

「ここだけ作者の体験談が入っているのはなぜなのか?」

「タイトルがこれになっているのはどういう意図だろう?」

そういうふうに、本の「構成」そのものに注目してみるのです。そして何か「ここは普通の本と違うな、面白いな」と思った点があれば、そこについて、どうして自分は他の本と違うと感じたのか、その意図はどこにあるのか、書いてみるのです。

いささかトリッキーではありますが、思いのほかノンフィクションや入門書というジャンルには、このような形式が使えます。

本書の「構造的な面白さ」とは?

具体例を挙げましょう。

まずは、『科学者18人にお尋ねします。宇宙には誰かいますか?』の「構成」で、他の本と違う、面白い箇所を考えてみます。それはほかでもない、「18人の説をそれぞれ均等に並べていること」でしょう。

本書の構成は、まったく同じ7つの質問を、18人のさまざまな分野の研究者に問う、というものになっています。18人の研究者は、自分の分野に照らし合わせながら、それぞれの質問に答えます。質問内容は「生命の定義」について、独自の見解をおしえてください」だとか「どうすれば地球外“知的”生命体を発見できるのでしょう?」だとか、宇宙人に関するものになっています。

同じ質問を、18人もの研究者に問うこと。なぜ作者はこのような構成にしたのでしょうか? 

ただ「宇宙には誰がいますか」という問いの答えを知りたいだけなら、有名な研究者一人に、この7つの質問をぶつけてみてもよかったはずです。そしてじっくり答えてもらった内容を、一冊の本にしても良かった。でもそうしなかった。わざわざ18人もの、多様な分野の研究者に問うたのです。
この「構成」の意図は、どこにあるのでしょう?

ここから先は私の考えですが、本書はおそらく、学問のアプローチそのものを提示してみせているのです。私が本書を読んで面白いなと感じたのは、回答のなかで、「知的生命体」の定義すらバラバラであったことです。「宇宙には誰がいますか」という同じ問いを解こうとしても、こうも研究者によってスタンスが異なる! それこそが本書の提示している、学問の多様さそのものなのです。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT