あるいは理系の研究内容を学生さん向けに伝える入門書。絶対に、作者が工夫している点があるはずです。
「なぜこの魚の話から始まっているのか?」
「ここだけ作者の体験談が入っているのはなぜなのか?」
「タイトルがこれになっているのはどういう意図だろう?」
そういうふうに、本の「構成」そのものに注目してみるのです。そして何か「ここは普通の本と違うな、面白いな」と思った点があれば、そこについて、どうして自分は他の本と違うと感じたのか、その意図はどこにあるのか、書いてみるのです。
いささかトリッキーではありますが、思いのほかノンフィクションや入門書というジャンルには、このような形式が使えます。
本書の「構造的な面白さ」とは?
具体例を挙げましょう。
まずは、『科学者18人にお尋ねします。宇宙には誰かいますか?』の「構成」で、他の本と違う、面白い箇所を考えてみます。それはほかでもない、「18人の説をそれぞれ均等に並べていること」でしょう。
本書の構成は、まったく同じ7つの質問を、18人のさまざまな分野の研究者に問う、というものになっています。18人の研究者は、自分の分野に照らし合わせながら、それぞれの質問に答えます。質問内容は「生命の定義」について、独自の見解をおしえてください」だとか「どうすれば地球外“知的”生命体を発見できるのでしょう?」だとか、宇宙人に関するものになっています。
同じ質問を、18人もの研究者に問うこと。なぜ作者はこのような構成にしたのでしょうか?
ただ「宇宙には誰がいますか」という問いの答えを知りたいだけなら、有名な研究者一人に、この7つの質問をぶつけてみてもよかったはずです。そしてじっくり答えてもらった内容を、一冊の本にしても良かった。でもそうしなかった。わざわざ18人もの、多様な分野の研究者に問うたのです。
この「構成」の意図は、どこにあるのでしょう?
ここから先は私の考えですが、本書はおそらく、学問のアプローチそのものを提示してみせているのです。私が本書を読んで面白いなと感じたのは、回答のなかで、「知的生命体」の定義すらバラバラであったことです。「宇宙には誰がいますか」という同じ問いを解こうとしても、こうも研究者によってスタンスが異なる! それこそが本書の提示している、学問の多様さそのものなのです。
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