米国文学研究者が「自己啓発本」にのめり込んだ訳 系統立てて読むことで真意がわかるようになる

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尾崎俊介 自己啓発本
(写真: Fast&Slow / PIXTA)
古今東西の自己啓発本の名著を集めた『大学教授が解説 自己啓発の必読ランキング60 自己啓発書を思想として読む』を上梓した、アメリカ文学研究者で愛知教育大学教授の尾崎俊介氏。尾崎氏はなぜ自己啓発本にのめり込むようになったのでしょうか。

自己啓発本研究に着手したきっかけ

2年前に『14歳からの自己啓発』(トランスビュー)を、また昨年には『アメリカは自己啓発本でできている』(平凡社)という本を出し、自己啓発本研究者として名乗りを上げて以来、自己啓発書の中でも極め付けの名著と言われるものを私自身の価値基準で選び出し、それを紹介するようなブックガイドを世に問いたいと、ずっと思ってきた。

そもそもアメリカ文学の研究者である私が自己啓発本研究に着手したのは、必然でもあり、また偶然でもある。

このテーマに取り組む以前、「ハーレクイン・ロマンス」というカナダ生まれの女性向けロマンス叢書のことを10年ほど研究していた。このロマンス叢書、女性には異常なまでの人気があり、北米大陸の女性たちのみならず、日本を含む世界中の女性読者の心を鷲掴みにしているのだが、たまたまそのことを聞きかじった私は、一体なぜロマンス小説なるものがこれほど易々と女性読者を虜にするのか、その謎を解明したいと思ったのである。

かくして私は、上記の謎に対する私なりの解答を『ハーレクイン・ロマンス』(平凡社新書)という本の中に書き記すまでに費やした10年もの間、「女性向けロマンス小説」という名の女性だけの秘密の花園を延々と引きずり回される羽目に陥るのだが、それはまた大衆文学研究の面白さを堪能した10年でもあった。

高尚な文学作品について云々することには、無論、大いに意味があるだろうが、大衆文学には大衆文学ならではの魅力がある。下世話な庶民に親しまれているこの種の文学を研究することで、普遍的な人間の真実が見えてくるということは確かにあるのだ。

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