奇祭の最後を締めくくるのは、不思議な儀礼の舞だ。木片を不規則に打ち鳴らし、静かな音が響くなか、これまでのパレードや祝祭のダンスでは着用されていなかった大きな黒っぽい羽根でできた冠をかぶった男たち が、槍と盾を持ち、ゆっくりと、しかし、厳かに舞いながら、1人ずつ入場してきた。
お互いに顔を向けたり、背を向けたりして、細切れのスローモーション映像のように舞う。同胞が殺された時に踊る「戦争の舞」だ。
観客席の子どもたちも真剣な表情に変わる。イフガオの人々は昔、仲間が殺されたときに、犯人が別の戦争で討たれたり、自ら命を絶ったりするように、呪いをかける儀礼を行ったという。 その儀礼の踊りは、復讐を誓う戦士の怒りが、見る者にも伝わってきた。
宿泊は断崖絶壁に建つ民宿で
バナウェ町にはバナウェ・ホテルと呼ばれる政府観光省が経営するコンクリート製の立派なホテルが建っている。だが、老朽化が進み、値段も高いため、バックパッカーたちの多くは断崖絶壁の急斜面に建てられた宿舎に向かう。
宿舎の入り口にはたいてい食堂が設けられており、宿泊者は食堂の脇にあるレセプションを経て、地下(というか崖下)に増設された、極めて質素な部屋を借りることになる。共同トイレ・シャワーしかない宿舎も多い。
町の中心部から乗客用3輪オートバイのトライシクルで20分ほど舗装された山道を登ると、展望台に着く。木彫りや伝統織物などの土産物屋が立ち並ぶ一角を通り過ぎて、展望台の1つに到着すると、眼前に整備されたライステラスの群れが目に飛び込んでくる。
8月や12月ごろの収穫期(場所によって違う)に行くと、ライステラスが黄金色で染まる。3月や9月ごろの田植え前後の時期には泥色の棚田がそれぞれ太陽に反射し、6~7月ごろには緑色の成長した稲が風に一斉になびく。これらの眺めも見事で、どの季節に訪問しても絶景が楽しめる。
世界遺産に登録されていない棚田でさえも見事なのだが、バナウェ町のさらに山奥にあるバタッド村と、隣のフンドゥアン町ハパオ村、そしてマヤオヤオ町などには世界遺産に登録された独特の棚田群が広がっている。
特にバタッド村のライステラスは高い山の斜面がほぼ頂上から麓にいたるまで一面に棚田で埋め尽くされており、そのスケールの大きさには息をのむばかりだ。
不思議な奇祭と世界遺産のライステラス。セブ島などのビーチリゾートとは一味異なるフィリピンをぜひ味わっていただきたい。
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