会社で地獄を見た「36歳・ギフテッド男性」の提言 優秀なのではなく特殊なのだと知ってもらいたい

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IT企業の1次面接を受けることになり、面接担当者からは、ギフテッドについて聞かれた。ギフテッドというのはどういう特性なのか。能力を発揮するためには、どういう支援が必要なのか。吉沢さんは、正直な思いを伝えた。

「自分が過去に成功したのは、いずれも人とやり方は違ってでも、勝手に動かせてもらえた時でした。不躾なお願いですが、もしご一緒することになったらそうさせてほしいです」

最終面接でもギフテッドの話題になり、面接担当者からは「会社にもそういう人はたくさんいると思うよ」と言われた。吉沢さんは、「当たり前の存在として見てもらえる」と安心できたという。入社してからは、自分の取り扱い説明書を渡した。

「自分はプロジェクトのようなチームを組む動きより、人より先を一人で突っ走って成果を形にします。つなぎ役はそれが得意な人にお願いします」と伝えた。そうした吉沢さんの得意分野を活かしたことで、成果も出ている。社内の個人MVPにノミネートされたり、人事データを分析する外部のコンペで表彰を受けたりした。

ただ、こうした能力の発揮の形を会社に認めてもらうのには課題を感じた。長所を活かし短所を周りにフォローしてもらうという働き方が減点対象となり、周囲と同じ働き方を目指すことがキャリアとして求められた。今後、社内で多様な能力が活かされるためのモデルケースになれるよう対話を続けているが、まだまだ壁は厚いと感じている。

なじまなくたっていい

ギフテッドは、「知能が高くて、社会性が低い」という誤ったイメージを持たれがちだ。「本当に頭が良い人は周囲とうまくやるはずだ」という批判を向けられることもあるかもしれない。しかし、知能が高く、視野が広いからこそ、方法や目指すゴールが周囲と異なるのかもしれない。

ギフテッドの特性として、複雑で論理的な洞察力や正義感などがあることがこれまでの研究で指摘されている。吉沢さんの仕事の目的は、上司の顔色をうかがうことや社内政治をすることではなく、会社や社会が良い方へ向かうこと。まっすぐに最適な方法を模索することを周囲が理解できなかったのではないか。

(撮影:高橋奈緒/朝日新聞出版写真映像部)
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