「発達障害の生きづらさ」訴える男性が饒舌なワケ 年収280万円、正規職員で身分も安定している

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発達障害のせいで自己肯定感は皆無だというヨシオさん。2年前にADHDと診断された(写真:ヨシオさん提供)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「私のような『ごくありふれた』発達障害者にも目を向けてもらえると多くの人は救われると思いまず」と編集部にメールをくれた、31歳の男性だ。

2年前にADHDと診断された

「最近はマスコミや当事者の集まりなんかでも、発達障害は特性だとか、強みだとかいわれますけど、発達障害なんて、ないことこそが何よりの強みなんですよ」

ヨシオさん(仮名、31歳)は私とのあいさつもそこそこに発達障害の生きづらさについて話を始めた。自身は2年前にADHD(注意欠陥多動性障害)と診断されたという。

「だって発達障害の人が会社や職場で迷惑をかけているのは事実ですよね。上司や同僚からしたらそんなやついないほうがいいに決まってる。職場から去るべき存在だってことはわかってます。じゃあ、なぜ働いているか? 生きていかなきゃいけないからですよ!」

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ヨシオさんの話は止まらない。「生きるのに向いていない」などと自虐的なことを言ったかと思うと、一転切々とした口調でこう訴える。

「でも、僕だって努力してるんです。毎日自分を責め抜いて生きてる。だから大目に見てほしい、手加減してほしいんです」

ヨシオさん口調はまるで坂道を転がり落ちるように加速していった。息継ぎの合間も惜しいといった感じだ。それまでの人生で味わった多くの理不尽な経験を伝えたいという強い意思が伝わった。一方で本連載を通して少なくない発達障害の人に出会う機会を持ったことで、私にはヨシオさんのこうしたマイペースな振る舞いも当事者の“特性”のひとつであるように思えた。ただ一方的に話を聞いているだけでは取材にならない。だから、私は強引にヨシオさんの話を遮った。

「いったん私の話を聞いてもらえますか」と言うと、ヨシオさんがハッとしたように口をつぐんだ。そして少し申し訳なさそうに答えた。「いつもしゃべりすぎちゃんです」。

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