大学卒業後、初めて就いた仕事は営業職。個人宅に飛び込みでセールスをしなくてはならず、そこではまさにこの「しゃべりすぎ」が災いしたという。
「先輩からは、営業のコツは相手から話を引き出すことだとアドバイスされました。こっちが話すのは2割でいいと。でもいつのまにか自分が8割しゃべってしまっているんです」
扱っている商品の話ならまだしも、自分の身の上話やその日あった出来事について語っている。結果を出さなければと焦れば焦るほど空回りした。加えてヨシオさんはいわゆる空気を読むことができなかったという。
「『二度と来るな』とか、『今度敷地に入ったら警察を呼ぶからな』とかしょっちゅう怒鳴られました。怒鳴りつけられて初めて相手が怒っていることに気づくんです」と振り返る。
営業担当者にありがちな失敗談にもみえるが、激怒される頻度が高すぎた。先輩からは、少し話をしてみて相手に脈がない、迷惑がられていると思ったら引き下がるのだと教えられたものの、ヨシオさんにはその見極めができなかった。
「打ち合わせ」の予定が組めない
会社に戻ってからの事務作業も苦手だった。誤字脱字、計算間違い、記録漏れ――。自宅や出先にパソコンや携帯を忘れてくることもしょっちゅう。上司からは「契約が取れるまで帰ってくるな」と言い渡されることもあったという。
「会社の中にも、外にも逃げ場がありませんでした」
最初に勤めた会社は追われるようにして数年で退職。すぐに就職活動を始め、ある自治体の正規職員として採用された。しかし、「ここでもやばいほどトラブルばかり起こした」と振り返る。
中でもヨシオさんが苦労したのは「打ち合わせの予定が組めないこと」だった。
上司と先方の関係者らの予定を調整して日程を組み、場所を押さえ、当日までの準備をする、という一見基本的な業務がヨシオさんにとっては難しかった。肝心の上司の出張の日に予定を入れてしまったり、打ち合わせ場所までの移動時間を考えずに直前まで別の会議が入っている時間帯に予定を組んでしまったり、当日の話し合いまでに必要な段取りや確認ごとができていなかったり、資料のコピーが間に合わなかったりといった失敗を繰り返した。
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