ひざ「痛み止め」に頼る人がわかっていない真実 体が自然に治る仕組みを知り原因に向き合おう

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②末梢神経抑制剤(商品名:リリカ・プレガバリン)

ずっと①の消炎鎮痛剤を飲み続けていると、からだはそれを分解する回路が速くなり、薬が効かなくなります。そうすると別の経路で痛みを止める必要が出てきます。とくに腰痛などの慢性痛をブロックするために使われる薬がこれです。痛み刺激を知覚神経が脊髄の後根から伝達し、脳へと向かいますが、この後根の入り口で痛みを止めるのがこの末梢神経抑制剤です。

脊髄後根には痛みだけではなく、足の裏の位置感覚などの情報も入ってきますが、この薬により、それも止められてしまいます。ずっと飲み続けると、副作用として平衡感覚が失われてふらつくことがあります。

飲めば痛みは止まるが、それで治療なの?

③中枢神経抑制剤(商品名:モルヒネ、脳に作用する麻薬)

痛み刺激が神経を通して脊髄を上がって脳に向かいますが、中枢神経抑制剤は、脳で痛
みを止めるお薬です。副作用としては、便秘や依存症などがあります。

①から③まで、いずれの痛み止めも、それぞれからだで起こった事故を脳へ伝える経路
のどこかで、その信号を止めているものです。

痛みはつらいので、飲んだらいけないとは言いません。頓服として飲むようにしましょう。

どの薬も軟骨は増やさないので、一番の原因は治りません。しかし痛みがスッキリ止まるために、治ったと感じる人が多いのです。これを治療というのは、おかしいと思いませんか? 痛み止めは必要なものですが、対症療法であることを理解して使いましょう。

痛みはつらいけれど、からだにとって必要があるから出ているもの。痛みはむしろ自分のからだを守ってくれている警察官だと思ってください。むやみに止めると大事なことを見失います。からだは間違ったことをしないのです。

なぜ痛みが出ているのか、原因を改善して痛みが出ないようにするのが「根本治療」。痛み(症状)だけをなくすのが「対症療法」で、それは症状を悪化させる原因になることもあると覚えておきましょう。

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巽 一郎 一宮西病院整形外科部長

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たつみ いちろう / Ichiro Tatsumi

医師。ひざのスーパードクター。1960年生まれ。静岡県立薬科大学薬学部卒業後、大阪市立大学医学部に入学。卒業後は同附属病院整形外科に入局し手術三昧の日々を送りながら、米国(メイヨー・クリニック)と英国(オックスフォード大学整形外科留学)などに学び、世界最先端の技術を体得。日本屈指の技術と、患者の立場に立った診療方針で全国各地から人が絶えない。評判の手術の腕の一方で「すぐには切らない」医師として話題を集める。湘南鎌倉総合病院人工膝関節センター長を15年務めた後、2020年より一宮西病院人工関節センター長に。

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