日本の最低賃金「欧米レベル」になれない5大原因 国際標準並みに高くなる日はやってくるのか

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ついに韓国にも抜かれたわけだが、3月15日に岸田首相が「政労使会議」の場で、「全国加重平均1000円」の最低賃金の実現を目指す、と発言している、さらに、4月12日に開催された「新しい資本主義実現会議」でも、最低賃金の地域間格差の是正に取り組む姿勢も示している

つまり、日本はまだ制度的に時給1000円の実現にも至っていないわけで、しかも日本の場合は、地域によって最低賃金が異なっており、これが最低賃金の伸びを阻んでいるという根拠となっている。コロナ禍から経済が復活する中で、人手不足が深刻になりつつある現在、日本の最低賃金の低さは大きな問題になっている。

OECDが、最低賃金制度を持つ30カ国のデータを集計した結果によると、日本は物価上昇を考慮しない名目で「6.5%増(2020年12月~2023年5月の伸び率、以下同)」、物価上昇を考慮した実質では「0.7%増」にとどまっている。

一方の海外の最低賃金は、インフレ率に連動して最低賃金が上昇するポーランドの名目「34.2%」増を筆頭に、アメリカを除く29カ国の平均で名目「29.0%」の増加、実質でも「2.3%」の増加となっている(日経速報ニュース 2023年7月11日19:20より)。

これまで日本政府は、他国の最低賃金が上がっても「日本はデフレ」という免罪符を使って何もしてこなかったわけだが、ここにきていよいよ国際的な人材獲得競争が起きつつあり、対策が急務と指摘されるようになっている。インフレ率を考慮に入れた最低賃金を上げなくてはならなくなってきた、ということだ。

「実質賃金」のマイナス続く日本!

一方、平均賃金の統計でも厳しい結果が出ている。厚生労働省の5月分の毎月勤労統計の「現金給与総額」は、前年同月比「+2.5%」となり、前月の0.8%を大きく上回った。春闘で妥結された賃金上昇の影響が、ここにきて出てきたといっていいのかもしれない。

とはいえ、消費者物価上昇率を引いた実質賃金は前年同月比「-1.2%」となり、前月の「-3.2%」から縮小したものの、依然として実質賃金は下落したままだ。マイナスになるのは14カ月連続。日本は、最低賃金が低いだけではなく、一般の会社員の平均賃金も実質的にマイナスになっているということがわかる。

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