日本の最低賃金「欧米レベル」になれない5大原因 国際標準並みに高くなる日はやってくるのか
④賃金の男女間格差が絶望的に拡大していること
男女間格差の拡大も、日本は深刻な問題だ。OECDのデータから男女間賃金格差の現状を見ると、日本の男性賃金の中央値を100とした場合の女性賃金の中央値は77.5(2021年、以下同)。OECDの平均が88.4、ニュージーランドやノルウェー、デンマークといった90を超えている国と比較すると、日本の男女間賃金格差は大きな問題と言える。
男女間格差を解消することでも、平均賃金は国際的に上昇していくはずだが、そのためには上場企業が役員の男女比率の実態(9.1%、2022年7月末現在)を変えていくなど、企業や社会全体が男女間格差を是正する必要がある。
⑤労働組合の弱体化
日本の労働組合の「推定組織率」は16.5%(厚生労働省、労働組合基礎調査、2022年)となり、過去最低を記録したそうだ。この数値は、国際的に比べると実はそう低い数値でもない。ただ、以前と比べれば全労働者の8割超が労働組合に加入していない現状では、労働者の権利が守られているのか疑問になる。とりわけ、日本の労働組合は、欧米と違って企業別の単体の労働組合であり、欧州のように業種別の組合組織になっていない。
そのためにどうしても労働組合は企業に忖度してしまい、いつまでたっても賃金が上がらない仕組みが出来上がっている。業種別労働組合に転換するには「連合」など大きな労働組合が先頭に立って、その運動を進めていくべきなのだが、日本では大企業に勤める労働組合も、自分の地位を守ることで精いっぱいともいえる。
今後は、最低賃金「1500円」でも足りない?
日本の賃金が上昇するかどうかは、やはり物価の上昇がこのまま続くかどうかにかかっている。しかし、日本銀行の景気予測ではこの先、消費者物価指数(CPI)の上昇率は鈍化していくことになるそうだ。ただ、日銀の景気予測とは裏腹にCPIは食料品やエネルギーを中心に、今後も上昇が予想されており、業種によっては時給1500円でも人が集まらない状況が発生していると言われる。
そもそも最低賃金の時給1500円は、全国労働組合連合会(全労連)が「全国一律の最低賃金」を1500円に引き上げるように、以前から要求している。1500円は、1日8時間働いて暮らしていける最低限の数字であり、国際的に見てもほとんどの先進国が実現させており、現在の為替レートから考えても1500円が最低賃金として妥当な数字だと主張している。
そもそも現在の人手不足は今後もますます深刻化していくと考えられており、「2030年には700万人が不足する」(みずほリサーチ&テクノロジーズ「みずほリポート 人手不足は2030年時点で約700万人に」より)という試算もある。インフレも、この10月には酒やワインなどを中心に3385品目での値上げが予定されている(帝国データバンク)。日銀の予想を裏切ってインフレが継続する可能性が高い。とはいえ、賃金がすぐに上昇する可能性も当面なさそうだ。
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