「寮費天引き」で手取り額がマイナスに
「支給額がマイナスのことがあるんですよ」
ひきこもり支援をうたう“引き出し業者”の施設に入所して3年。静岡県内の工場で働かされていたヒロユキさん(仮名、51歳)は、職場で出会った同僚にこう愚痴をこぼした。自宅から通勤する一般の派遣労働者だった同僚からは「そんなところ早く逃げたほうがいいですよ」と驚かれたという。ヒロユキさんがあらためて脱走を決意した瞬間だった。
週5日のフルタイム勤務。月収は16万円ほどで、通常であれば社会保険料や「寮費」約10万円などを差し引いた2万~3万円が支給された。しかし、ゴールデンウイークや夏期休暇で勤務日が少ない月は、収入がマイナスになってしまう。実際、毎月の支給明細書の一部は「差引支給額」欄が3000~4000円ほど「-」になっていた。
入所施設は相部屋。それで寮費10万円は割高なのではという問題もさることながら、給与から税金や社会保険料以外の項目を天引きすることは原則労働基準法で禁じられている。天引きにより手取り額がマイナスになるなど搾取といわれても仕方ない。
働き始めた当初スタッフからは「1年間で50万から70万円は貯まる」と説明されたという。ところが、半年後、業者側に没収されていた通帳を見せてもらったところ、貯金額が予想の半分以下だったことにショックを受けた。思えばこのころから不信感はあった。
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