日本の最低賃金「欧米レベル」になれない5大原因 国際標準並みに高くなる日はやってくるのか

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ちなみに、日本の平均賃金は約3万9700ドル(2021年、OECD)、そこから換算した最低賃金を60%とした場合、年収換算で2万3820ドルになる。月額にして1985ドル、現在の円レートを「1ドル=140円」で換算すると約28万円。1日8時間を25日間、月に200時間働いたとすれば、1400円の最低賃金が必要になる。この程度の収入がグローバルスタンダードと言っていいのかもしれない。

②社会保険料による「年収の壁」があるため

日本の最低賃金や平均賃金が伸びない原因のひとつが、いわゆる「106万円の壁」ともいわれる社会保険料制度の存在がある。夫の扶養家族に入っている主婦などが、パートタイマーなどで働く場合、年収の壁を越えてしまうと夫の社会保険料控除が使えなくなり、さらに健康保険税なども自分で支払わなくてはならなくなる。

この壁が原因で、ある程度稼がなければかえって損失を出してしまうために、高い報酬を求めて労働市場に参加する人が少なくなり、企業も優秀な人材に高い賃金で長時間働いてもらうことができなくなっている。

新型コロナによる影響で、テレワークが定着しつつあるが、この問題を解決しないと女性の社会参加率や賃金上昇が頭打ちのままになってしまう。すべては財務省が古い税収システムに戦後一貫して頼りきってきた証しともいえる。政府は重い腰を上げて「こども未来戦略方針」の中で、補助金を出す形で年収の壁解消に向けて協議を進めているが、もっと抜本的な方向転換が必要だろう。

正規雇用と非正規雇用の格差

③正規雇用と非正規雇用の格差が激しすぎること

正規雇用と非正規雇用の格差は、いまや取り返しのつかない格差を生み出している。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」の「正規雇用労働者・非正規雇用労働者の賃金の推移(2019年、雇用形態別・時給(実質)ベース)」によると、その差は歴然だ。

・一般労働者(正社員・正職員)……1976円
・短時間労働者(正社員・正職員)……1602円
・一般労働者(正社員・正職員以外)……1307円
・短時間労働者(正社員・正職員以外)……1103円

時給でざっと1.8倍の格差があるわけだが、日本の賃金が一向に上昇しない土壌を作ってしまったといえる。ちなみに国際比較のデータで見ると、正規雇用に対する非正規雇用の時間あたり賃金の比率は日本では64.8%(賃金構造基本統計調査、2010年、2014年、2018年の平均、リクルートワークス研究所、以下同)。対して、イギリスは85.1%、フランス81.1%、イタリア78.8%、ドイツ73.6%となっている。

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