地味な銀行を「Tech企業に作り変えた」CEOの執念 「世界最高のデジタル銀行」DBSのすごい大変革

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監査部門も変革に取り組んだ。以前の監査は、領域が限定的で過去のサンプルデータに基づいており、プロセスは硬直的で時間がかかり、監査を受ける部門には不評だった。そして監査部門は、テクノロジー&オペレーション部門が日常的に行っていたアジャイルのスプリント(開発工程を細分化して回す単位)に全く対応できなかったため、従来のプロセスの問題点を洗い出して改革に乗り出した。

その結果、手動でのサンプルデータ抽出およびチェックは、自動化されたデータ全量ダウンロードとチェックに移行し、周期的に行われていた監査は、継続的なレポート生成とオンデマンドでの監査実施へと変わった。また、支店リスクプロファイリングツールを開発し、機械学習と予測分析を活用してリスクイベントに遭遇しそうな支店を抽出して監査リソースの重点配分を行った。

監査を受ける業務部門は、長時間会議室に缶詰になる代わりに、アジャイル手法を活用した20分間のスプリント計画ミーティングへの参加を複数回求められるようになった。監査部門は人員数を増やすことなく、DBSの業務や組織の拡大に対応している。2016年にはASEAN優秀エンジニアリング達成賞を受賞した。

D:データドリブンであること

データドリブン組織文化への転換は、①組織文化と組織能力の構築、②データ活用環境の整備、③目的に合致したデータプラットフォームの構築の3つの柱を中心に推進された。

組織文化の転換のためには、より多くの人々を能力開発するほどデータ利用が高まると考えて、職員が気楽にデータ分析を使えるようにすることに焦点を定めた。まず、銀行全体で200件のデータ活用の取組みを推進した。職員は、Excel、Python、QlikView等の簡単なツールを使って分析を始め、データの分析や可視化の効果を理解できた。これで勢いとけん引力が作られた。

組織能力の開発にあたっては、2014年にシンガポール科学テクノロジー研究局と提携してラボを新設して、局のデータサイエンティストが銀行員と共に働くようにした。四半期に1度データ分析・活用のアイデア募集があり、選ばれたアイデアはラボで「お試し」された。こうしたアプローチで分析能力を高めるとともに、データ分析で何ができるかの理解が促進された。

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