地味な銀行を「Tech企業に作り変えた」CEOの執念 「世界最高のデジタル銀行」DBSのすごい大変革

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組織活動では全面的にアジャイル方式を取り入れた。問題が生じたり課題が特定されると、必要な人員(6名程度)がすぐに招集されてチームを作る。チームには業務部門とテクノロジー部門のスタッフが含まれている。

チームは20分程度の短時間のスタンダップミーティングを行い、解決に向けたアクションが共有され、次のミーティング(通常1~2週間後)までに各メンバーの実施すべき作業が決定される。この活動を繰り返して進めていくのだ。

B:学習する組織であること

DBSでは、一定金額までの外部研修受講については、上司の承認を不要とした。その代わりに1つ条件があり、受講者は研修の内容を、戻った組織にフィードバックしなければならない。そのため、対象者は真剣に受講するだけでなく、自ら講師が担当できるように内容を深く理解する必要が生じる。組織としては、研修内容が受講者個人の中にとどまらずに組織に共有される効果がある。

役員や事業部門長に対しては、リバースメンターという仕組みが導入された。彼ら1人ひとりにテクノロジー部門の若手を「リバースメンター」として1人アサインし、その若手に対して何でも尋ねてよいというものだ。

会議の場などで見知らぬIT用語が出てきた場合も、そのままやり過ごすのではなく、リバースメンターに質問すれば、その意味や内容が確認できる。これも心理的安全性の1つである。中にはプログラミングの手ほどきを受けた者もいた。

C:顧客中心主義であること

顧客には、外部の最終顧客だけでなく、組織内部の顧客も含まれる。DBSでは本部の各部門も、自らがサービスを提供する相手を顧客として改革を進めた。ここでは人事部門と監査部門の事例を挙げよう。

人事部門にとっては新入社員も顧客だ。通常新入社員は、入社してから本格的に仕事が始めるまでに一定の期間(いわゆるオンボーディング期間)を要する。入社手続きを行って研修を受け、配属先で必要なツールを受け取り、環境を設定してから仕事を習い始めるからだ。

そこでDBSの人事部門は入社プロセスを新入社員の視点からとらえ直した。現在では、書類関係の手続きはデジタルプラットフォーム上で行われ、新入社員は入社日より前にプラットフォームに接続して企業への理解を深められる。そして入社初日の午前中に人事部門のオリエンテーションを受け、午後にはコンピューターと携帯電話を入手して、すぐに仕事を始められる。機器のセットアップや必要な権限付与は事前に行われている。

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