地味な銀行を「Tech企業に作り変えた」CEOの執念 「世界最高のデジタル銀行」DBSのすごい大変革
その調査から得られた結果は、「スタートアップ企業の組織文化の模倣が求められている」ということだった。DBSは実際にシリコンバレーに赴いて、GAFAのようなデジタル先進企業を複数訪問した。そして、これら企業の組織文化や人々の行動について学んだ結果、組織全体がこれらの企業のように活動しなければならないことに気づいた。そうして生まれたのが「従業員全員をスタートアップに変革する」というテーマである。
組織のスピードアップは会議の変革から
組織全体のマインドセットを変えるためには、行動の変革を通じてポジティブな変化が生じているという実感が広く得られることが重要だ。そして経営陣が、「文化変革の最大の障害」として最初に見出したのは、意外なことに会議の実施方法だった。会議の数そのものが多く、成果を生まないものや明確な目的のないものもあまりに多かったため、組織のスピードアップの妨げとなっていたのだ。
そこで変革チームは「MOJO」という会議方法の試行に取り組んだ。
「MO」は会議のオーナー(Meeting Owner)、「JO」は楽しく参加する観察者(Joyful Observer)である。
「MO」には3つの役割があり、①会議冒頭で目的と背景を説明し、②終了時にキーポイントを要約し、③進行中は参加者の均等な発言と集合知の活用に意を用いる。
一方「JO」には2つの役割がある。①会議のタイムキーピングを行い、②MOの果たした役割について率直なフィードバックを行うことだ。非常にシンプルな仕組みである。
「MOJO」の試行を行ったところ非常に大きな成果が見られ、組織に展開すると50万時間超の時間節約が実現された。「MOJO」の成功によって、組織の時間効率に対する意識が高まり、活動のスピードが大幅に向上した
取り組みを進めるためには、心理的安全性も重要だった。ある時、CEOのグプタが会議の「MO」を務めた後に、1人の若い「JO」が、グプタが「参加者の意見を聴取しなかった」ことをフィードバックで指摘した。グプタはその「JO」に感謝の意を表して、その行為を称賛した。
この出来事は行内に広まって、正しい行動を取ることの心理的安全性を大いに高め、「MOJO」の普及を加速させた。「MOJO」は、組織活動のスピードアップだけでなく、部門や階層を超えてフラットなコミュニケーションを行う文化の醸成に役立ったのだ。
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