「奨学金650万円」29歳で完済した彼の心配性人生 最大返済額「820万円」を見た日に人生が変わった

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すべてが希望どおりとはいかなかったが、なんとかお金の工面はできた赤田さんは、一浪の末に近隣県の国立大学に合格。私立大学は選択肢に入っていなかった。

ところで、浪人時代の予備校などの資金はどこから出てきたのか? 赤田さんの通っていた進学校には、付属の予備校のような制度があったため、そこに年間60万円で通うことができたという。地方の公立進学校ならではの話だ。

大学進学後も奨学金制度について調べ直す

こうして、国立大学の医療系の学部に進学した赤田さん。親元を離れ、家賃2万7000円のアパートでひとり暮らしを始め、将来は診療放射線技師になることを目標に掲げた。

「診療放射線技師の資格は3年間のカリキュラムなので、短期大学でも取れます。ただ、4年制の大学であれば、講義が詰め込みにならないため、精神的にも時間的にも余裕ができると思ったんです。学費は年間56万円なので、4年間でだいたい224万円。それに、入学金30万円と教材費が毎年10万円程度かかりました」

家賃、学費、生活費……。当然、それらはすべて奨学金で賄う必要がある。実家からの仕送りは望めない。

「医療系の学部なので、卒業後に指定の病院に就職すれば、奨学金が免除される制度もありますが、高校のときはそのような制度を当時は知りませんでした。また、調べていたとしても、行きたい病院に限って、そのような免除制度を設けていなかったり、人気の病院は枠の取り合いになっている状況でした。それでも、なにか応募できる制度はないか探しながら、大学に母子家庭であることを申請したところ、1年目の学費が全額免除になりました」

さらに、赤田さんは書類を読み返したり、インターネットで奨学金制度について調べ直す。その結果、『820万円』はあくまでも計算上の最大額で、金利の水準が大きく変わらなければ、実際はもっと少なく済むことがわかった。

また、第二種奨学金の貸与額を減らすかわりに、利子のかからない第一種奨学金を借りることになった。高校生時代の「予約採用」と違い、大学入学後の「在学採用」は大学の成績が判断材料となるが、ここではクリアできていたのだ。

「大学入学後に友人から『今なら借りられるのでは?』とアドバイスをもらったんです。そこで、申請したところ、今度は無事に通りました。そのため、3年生になってからは、第二種奨学金を毎月12万円から8万円に減額して、代わりに利子のかからない第一種奨学金を毎月5万円借りるようになりました」

奨学金の連載を1年以上続けている筆者からしても、かなり現実的かつ堅実な姿勢に思えるが、それでも、赤田さんの将来への不安は募るばかりだった。

「一度『820万円』という額を突きつけられたせいで、少しでも負担を減らしたいと思うようになり、2年生以降はアルバイトに明け暮れました。もう『借りているお金は余らせないといけない!』という気持ちで生活していましたね。飲食店、コールセンター、派遣のトリプルワークで、週末はフルタイム、平日も深夜まで働いて、8万〜10万円。長期休みには23万円も稼いでいました」

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