とくに生活が制限されたり、クラブ活動ができなかったということはない。しかしながら、中学生のときから、どことなく「うちはほかの家とは違う」と感じるようになった赤田さん。そんな環境から抜け出したいと思ったのか、子どものときから勉強はできたため、高校は市内にある公立の進学校を選んだ。
「歴史が古く、OBがたくさんいる学校のため、高校独自の給付奨学金をもらうことができました。これは生活の足しにするというよりも、通っている間の学費をすべて賄うことのできるほどの額です。通学には1時間半かかりましたが、それでも地元の高校とは偏差値も大きく違ったため、周りからも『進学校に通えばチャンスがあるよ』と言われていました」
給付型奨学金を寄付している、OBたちの思いは進学率の向上だろう。当然ながら、赤田さんも大学に進学しないという選択肢は考えていなかった。
「母子家庭で実家にお金がないとはいえ、子どもの頃から『絶対に大学には行くんだ』という気持ちは持っていましたからね。それに家族や地元には高卒の人が多かったので、周囲も反対することなく『いい大学に入れよ』と応援してくれていたんです」
第二種奨学金の返済額を見て愕然とした
そんな赤田さんには6歳上と3歳上の兄が2人いる。母親が祖父母の家に引っ越してから、相次いで祖父母が亡くなり、母親のもとに遺産が入ってきたことで、兄2人はそのお金を使って専門学校に通うことができた。
ただ、それから数年が経過し、赤田さんが大学進学を希望していた頃には、遺産はほとんど残っていなかったという。
「もう、家族に大学の費用は出してもらえないだろうなとは悟っていました。そこで、母に言われるまま、何もわからずに第二種奨学金(有利子)を毎月満額の12万円借りることにしました。高校生ながら、『4年間借り続けた場合、返済額は最大820万円になる』という数字を見て愕然としました」
一応補足しておくと、もし毎月12万円奨学金を借りるとして、単純計算で貸与額は「12万円(毎月借りる額)✕12カ月(1年間)✕4年(在籍年数)=576万円」である。が、JASSOから送られてくる資料には、上限の金利である3.0%で計算した金額が『最大の返済額』として記載される。本連載に登場してくれる人によく見られる勘違いだが、この出来事は良くも悪くも、高校生だった赤田さんが自身の人生を真面目に考えるきっかけになったようだ。
他方で母子家庭であれば、第一種奨学金(無利子)の申請も通りそうなものだが、これは進学校に通っていたことが仇となった。
「高校在学中に第一種奨学金の予約をするのですが、『評定平均3.5以上』という規定に届かなくて……。というのも、進学校でみんな賢いから、勉強に追いつくのが精一杯だったんです。だから、第一種奨学金は応募することができませんでした」
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