持ち前の堅実さと努力で、20代のうちに奨学金を全額返済することができた赤田さん。肩の荷が下りてからは、別の病院への転職も果たした。
というのも、返済している間はあまりにもストイックな生活を送りすぎて、何事も行動に移すことができなかったという。
「ずっと節約を心がけていました。ひとり暮らしですが、外食はせずに毎日自炊。職場にもお弁当を持参し、お酒も付き合い以外では極力飲まないようにしていました。趣味もとくにないので、年に1回の旅行以外はほとんどお金を使うことはありませんでした」
自分に厳しくストイックな生活を送り、貯金をしていた赤田さん。だからといって、友達付き合いをやめることはなく、結婚式に呼ばれたら必ず出席していた。
「地元の友達は結婚が早かったので、すでにもう30万円近くはご祝儀で消えています(笑)。確かに痛い出費ではありますが、これを断っていたら友達がいなくなっちゃいますよ」
奨学金の存在がネックになっていたことは確か
そんな、赤田さんに結婚の予定はまだない。ただ、そこにも奨学金の返済が関係しているのかもしれない。
「彼女との結婚を意識していたときは、やっぱり奨学金の存在が『足かせ』とまではいいませんが、ネックになっていたことは確かです。自分の抱えた負債が子どもにも影響するかもしれないと思うと、安易に結婚することもできません。だからこそ、普通の生活を送るためにも『早く返さなくては』という気持ちになりました」
かつて、夜勤に入らないと手取りで20万円にも満たなかった赤田さんの給料だが、今は転職したことで年収も500万円に増えた。
学生時代から社会人になった今に至るまで、奨学金の返済という重圧が強迫観念のように彼を苦しめていたことは一目瞭然だ。その一方で、今の自分があるのは奨学金の存在のおかげでもあることを、彼は重々理解している。とはいえ、追い詰められるほど、借りるべきではなかったと振り返る。
「子どもの頃に自分の置かれた環境に腐らず、ちゃんと勉強して大学に入ったことで、大人になった今、稼げる職業に就けたのはよかったですね。でも、奨学金を借りる際に、わけもわからずに満額12万円を借りたことは悪手だったかもしれません。
今、振り返っても、もっと自分でも調べて、計画的に少なめな金額を借りるべきだったと思います。高校生のときにもらっていたような給付型奨学金も、大学にもきっと利用できるものはあったはずなので、もっと奨学金制度について調べておくべきでした」
20代のうちに650万円も完済し、安定した職業と低くない年収を手にしたことを考えると、赤田さんはいささか「自分に厳しすぎ」と思わなくもないが、お金はそれだけ「タラレバ」が生まれやすい話題なのだろう。返済から解放された赤田さんの今後を応援しつつ、自身の将来を不安視する、心配性な高校生や大学生に、彼のリアルな体験談が届くことを願いたい。
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