外資系企業が考える管理職としての「最悪の選択」 コンコルドの失敗とインテルの成功に学ぶこと
私は長らく、日米の資産運用業界で働いてきました。資産運用会社の仕事は、投資家から委託された資金を株式や債券などに投資して、目標に応じた運用成果を上げることです。その投資判断をしているのがファンドマネジャーと呼ばれる人たちで、詳細な企業調査と独自の判断基準に基づいて選んだ企業に投資します。
「買った株が値下がりしたときの判断が難しい」という声をよく聞くので、ある資産運用会社の辣腕ファンドマネジャーPさんに、そのことを聞いたことがあります。
Pさんの答えは、「状況が変わったのか変わらないかによる」とのこと。その企業の業績などと比較して、いまの株価が割安だと判断したから買ったのである。値下がりしても前提条件に変化がなければ、かえって割安度が増したことになるので持ち続ける。
しかし、見過ごしていた情報が明らかになったり、業績の読み違いだったりした場合、分析の前提が変わった、すなわち状況が変わったので損切り(損失覚悟の売却)する。
売るべきときに、「ここまで持ったのだから」とか「いま売ると損が出るから」などと考えてダラダラと持ち続けると、たいてい大損する。「いまだったら、その株をあらためて買うのか?」と自問してイエスなら保有、ノーなら売却とのこと。
このようにして投資銘柄群を常にベストの状態にしておくことが、運用を任されているファンドマネジャーとしての責任だと言うのです。
「ここまでやってきた」は理由にならない
私たちも、うまくいかないことが薄々わかっていても、「ここまでやってきた」ことを理由に、その状況から目をそらしてしまうことがあります。そこには、次のような心理があります。
- 失敗を認めたくないという自己防衛の気持ち
- 投じた資金や時間を損失として確定させることへの抵抗
- もしかしたら一発逆転できるかもしれないという根拠のない期待
しかし、これすなわちPさんの言う大損パターンです。このようなときの判断基準は「ここまでやったのだから」という過去ではなく、「いま始めるとしても、同じことを同じやり方でやるのか?」といった現在に置くべきです。
状況が変わっておらず「イエス」であれば必要な改善をしながら続行、状況が変わったので「ノー」であれば、方針を根本的に見直すか終了、「ここまでやったのだから」という判断は「ノー・サンキュー」です。
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