世界的人気「BTS」と「ユング心理学」の意外な接点 自分たちは「何者であるか」を問い続けてきた
Map of the Soulは、日本語に訳すと「魂の地図」という意味である。
ユング心理学において「魂」と「こころ」は異なるものであり、ユングは「魂」とは「こころ」にあるコンプレックスの一種で、「個性」とほぼ同義であるとみなしていた。
それゆえ「魂の地図」というのは「自分の個性を探そうとする人に向けた案内」といった意味が込められていると思われる。
BTSの「MAP OF THE SOUL: PERSONA」に入っているRМさんのソロ曲 “Intro: Persona” のミュージックビデオでは、RМさんがさまざまなバージョンの自身に扮する様子が映し出される。
彼の背後に時折映る黒板には、persona(ペルソナ)、shadow(影)、ego(自我)といったユング心理学のキーワードが書き出され、歌詞にもちりばめられている。
こころを家に見立てるとき、ペルソナは家の外側の部分を指し、影はこの家の地下に住む住人で、自我はふだん暮らす1階の部屋に住んでいる「私」である。
ペルソナは、家がどう見えるか、つまり私たちが社会生活を送るうえで付ける仮面を指し、「他人にどう見られたいか」という自分のこころの一部である。だから「MAP OF THE SOUL: PERSONA」は、BTSがアイドルとして自分たちが付けている仮面・ペルソナを通じて、「自分は誰なのか」と問う内容になっている。
さらに「MAP OF THE SOUL:7」では、ペルソナについての思索を経て、メンバー7人が「抑圧して見ないようにしてきた自分のこころの一部」、つまり影について検討している。
社会的な自分と本当の自分との間の葛藤
「MAP OF THE SOUL: PERSONA」と「MAP OF THE SOUL:7」という2つのアルバムを通じて、BTSは社会的な自分と本当の自分との間の葛藤と、それをどう引き受けていくかというテーマに取り組んでいる。
ユング心理学では、自分の個性についての理解を深め、自分の個性を発揮しながら生きていくことを「個性化」と呼んで大切にしている。
MAP OF THE SOULシリーズはBTSのメンバーが歌を通じて自分たち自身への心理療法を行っているともいえ、彼らの個性化のプロセスを描き出しているように思われる。
BTSはなぜ世界的な支持を得るに至ったのか──それはさまざまな形で分析がなされているが、おそらくそのどれもに正しい部分があり、そのどれもが完全な説明ではない。物事には不確定の要素が必ずあるからだ。
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