多くの営業車をかかえる企業のケースで考えてみましょう。営業社員の運転事故に関する主なリスクだけでも、いくつかすぐに思いつきます。
・運転中にものにぶつかり破損させてしまうリスク
・営業車が破損するリスク
・運転中に他人をひいてケガ、死亡させるリスク
このようなリスクを完全に取り除く絶対確実な方法がひとつあります。営業車をすべて廃止することです。これならば100%リスクを取り除くことができます(リスクの回避)。しかし、それでは仕事ができませんから、これは現実的に取りえる方法ではないでしょう。
そこで企業は、営業車の数を減らすことを考えます。また、営業社員に安全運転に努めるよう指導します。たとえば、スピードを厳守させることで事故の発生頻度を下げ、同時に事故が起きた場合の損害ダメージを小さくできます。多くの企業はこのようなリスク軽減策を講じて、一つひとつ地道に取り組みます(リスクの軽減)。
しかし、それでも交通事故は避け切れません。毎日のように運転して営業回りしていれば、事故は起こってしまいます。そこで企業は、事故に備えて金銭面の準備をしておきます。小さな接触事故であれば、被害者にお見舞金を払う程度で解決できるかもしれません。車の修理費が必要な場合でも、高くても数百万円レベルでしょう。このように、ある程度の費用で済ませられる場合は、企業が積み立てたお金でリスクに対処できます(リスクの保有)。
ところが、人をひいて死亡させてしまうような大事故の場合はどうでしょうか。運転者に過失があれば、被害者の遺族から高額の損害賠償を請求されかねません。最近では億円レベルの金額を払う事例も多くみられます。企業としても、そこまで高額のお金を準備しておくことはできません。ここで初めて保険が登場します。このような大事故の場合には、保険会社が企業に代わって損害賠償金を払ってくれるようにあらかじめ契約しておきます(リスクの転嫁)。
保険に入るのは4ステップ目の判断
以上のリスク対処法をまとめてみますと、
2.リスクの軽減:それでも運転するならば、徹底して安全運転に努める
3.リスクの保有:十分に資金準備しておき、万一の場合の費用負担に備える
4.リスクの転嫁:費用が高額すぎる場合は、保険の利用を考える
このように企業は、保険以外に対処する方法がない場合に限って、保険を利用します。本当に最後の手段です。そのことを企業はよく理解しています。これが保険のプロの経済合理的な保険利用法なのです。
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