不朽の名著『夜と霧』が問う「生きることの意味」 究極の絶望で見出した「人生を決める決定要因」

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古来より歴史を動かしてきたのは「発想の転換」(写真:Rhetorica/PIXTA)
現在、学校教育のみならずビジネス社会においても「教養」がブームになっている。その背景には何があるのか。そもそも「教養」とは何か。
ベストセラー『読書大全』の著者であり、「教養」に関する著述や講演も多い堀内勉氏が、教養について論じる、好評シリーズの第3回目。

不朽の名著『夜と霧』

前回の記事「「教養」を習得すべき"たった1つ"の本質的理由」に続いてもう1冊、ユダヤ人精神科医ヴィクトール・フランクルの世界的ベストセラー『夜と霧』を紹介したいと思います。

フランクルは苛酷なユダヤ人強制収容所生活を生き抜き、解放された翌年の1946年にこの本を著しました。

本書の原題“trotzdem Ja zum Leben sagen:Ein Psychologe erlebt das Konzentrationslager”は、「それでも人生に然りと言う ある心理学者、強制収容所を体験する」というものです。

英語版は "Man's Search for Meaning" で、こちらは「人間が生きる意味を求めて」です。

これが、日本語版でなぜ『夜と霧』になったのかですが、1956年にフランスで公開されたアラン・レネ監督の映画のタイトル”Nuit et brouillard”(夜と霧)から持ってきたようです。

これは、1941年12月7日に出されたヒトラーの総統命令「ライヒおよび占領地における軍に対する犯罪の訴追のための規則」、通称「夜と霧」(Nacht und Nebel)に由来していて、ヒトラーが愛したワーグナー『ラインの黄金』の第3場「ニーベルハイム」からの引用だそうです。

この命令が当初意図したのは、ナチスドイツ占領地域において、すべての政治活動家やレジスタンス擁護者の中からドイツの治安を危険にさらす人物を選別し、収監することでした。

この対象となった者は、密かにドイツへ連行され、まるで夜霧のように跡形もなく消えてしまったそうです。

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