迷惑なトラックの「ノロノロ運転」その納得の理由 安全を守りつつ、荷物も守る「プロの技術」だ

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「側道からクルマが横入りしたら前に進まなくなるじゃないか」という声も聞くんだが、1台や2台入ったくらいでカリカリするくらいなら、自分が家を5分早く出ればよろし、と思う。

とくにMT車の場合、クルマが前にあることがわかっていながら、わざわざシフトチェンジしてまで速度を上げる必要はまったくなく、1日中運転しているドライバーにとってはただの体力の消耗にしかならない。

こういう観点から、私は「車間の広さ」と「ドライバーの心の余裕」はある程度比例していると思っている(もちろん道路環境に影響するほど低速なのは迷惑だが)。

高速道路を走るトラックには守るべきことが多くある

❷高速道路でのノロノロ運転

クルマを運転する人ならばご存じだと思うが、高速道路における大型トラックの制限速度は、現在のところ、多くが80kmになっている。

無理にスピードを出したり、速度を頻繁に変えたりすると燃費も悪くなる。そのため、普段からできる限り速度に変化をつけないよう、ゆったりと走っているトラックドライバーが多い。

また、大型トラックにおいては、社速(会社が決めた速度)が決められていたり、どんなにアクセルを踏んでも時速90kmしか出ないようにスピードリミッターが取り付けられている。それらドライバーの走り方は、車内に備え付けられている「デジタルタコグラフ」で逐一記録されているため、守らねば会社から処罰を受けるのだ。

【2023年7月10日18時50分追記】初出時、デジタルタコグラフの記述に事実と異なる部分がありましたので、上記のように修正しました。

何より、こうしてゆっくり走るのは、ほかでもない。車体の大きさがゆえに事故を起こすと大事故につながりかねないからなのだが、もう1つ彼らがスピードを出さないのは「荷物を守るため」である。スピードを出したり、不測の事態で急ブレーキを踏むと、その瞬間、荷物が荷台で荷崩れを起こす。後述するが、トラックにとってこうした荷物事故は弁償にもつながる。

荷崩れで済めばまだいい。積み方によっては、慣性の法則で荷物が運転席になだれ込み、最悪の場合、ドライバーが押しつぶされることにもなる。私も鉄板のような金型を運んでいたとき、あともう少しで体が真っ二つになりそうな瞬間があった。

そのため、トラックドライバーは、前方に不測の事態が起きたとき、「前への衝突」と、「後ろからの荷崩れ」のどちらかを一瞬のうちに天秤にかけることを余儀なくされることもあるのだ。

高速道路で他車両とよくもめる原因になるのがトラックの「追い越し車線のノロノロ運転」だ。

確かに追い越し車線には、後続車両を渋滞させるノロノロなトラックがいる。

無論、ただの悪質なトラックもいるが、なかには追い越し車線から走行車線に戻ろうとするトラックを妨害する走行車線のクルマによって、トラックが追い越し車線から脱出できないケースもあるのだ。

走行車線を走るクルマが追い越し車線のトラックを入れまいとする理由は、トラックに前を走られると圧迫感があるからだろう。

今まで多くのドライバーに取材をしてきたが、やはりトラックの後ろは前の景色が見えないし、壁に向かって走ってるように感じるから譲りたくないという声が少なからずある。

次ページ「過失の交通事故」における実名報道には、慎重になるべき
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