ヤマト6年ぶり値上げとドライバー改革の苦悶 ドライバー分業化へ大転換、3期ぶり増益期す

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宅急便の生みの親である小倉昌男氏はセールスドライバーについて「分業ではなく、なんでもこなす寿司屋の職人のように客の要望に応えてほしい」と伝えていた。ヤマトにとって大きな方針転換だ(撮影:梅谷秀司)

3期目の挽回なるか。宅配大手のヤマト運輸を擁するヤマトホールディングス(以下ヤマト)の2023年3月期は、売上高が前期比0.4%増の1兆8006億円、営業利益は同22.2%減の600億円と増収減益だった。2期連続で2ケタの減益決算という厳しい結果となった。

「構造改革や法人向けビジネスの拡大など、やるべきことはやった。一方で外部環境の変化は大きく、コロナ禍もあり物価上昇もあった。営業面、数値面の課題はある」。ヤマトの栗栖利蔵副社長は冷静に振り返った。

宅急便の取扱個数は19億2633万個と前期比1.9%増加。ECの荷物を伸ばし、大口や中口顧客の開拓も進んだが、全体の40%を占める地場の法人顧客の伸び率は1%にとどまった。

顧客開拓が進まず、先行投資が拡大

主な減益要因は、構造改革に関連した委託費の増加だ。ヤマトは現在、ECの荷物増に対応して専用の配送網を構築すべく「ネットワーク・オペレーション構造改革」を実行中。物流拠点の大型化や集約、再配置など多方面で効率化策を進めている。

集配の委託費は前期に比べ63億円増加し、ECの物流網に関連する委託費は207億円も増えた。車両費や減価償却費も増加している。顧客開拓が思うように進まない中で先行投資が拡大して利益を圧迫した。

続く2024年3月期は、3期ぶりの増益計画だ。売上高は前期比3.3%増の1兆8600億円、営業利益は同33.1%増の800億円へ回復する見通し。委託費の増加を織り込んで今上期は大幅減益となるが、下期にかけて急速に巻き返すシナリオとなっている。

ポイントは2つある。1つ目が運賃の値上げだ。ヤマトは4月、原材料やエネルギー費上昇を背景に、宅急便などの基本運賃を6年ぶりに引き上げた。値上げ幅は約10%で、個人は料金表通りの値上げだが、取引の9割を占める法人顧客は個別に交渉を進めている。

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