「どの世代よりも苦しい」悩む40代に伝えたいこと 就職氷河期に就職し、ロールモデルのない悲哀

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当時の私のインタビューメモには、「20代は出世より成功者を好む、30代は結果的に出世できればいいと考える、40代は出世願望を口にすることは仕事にしか価値を見出せない寂しい人間と思われるのではないか? と恐れている、50代は出世に関するネガティブなイメージは一切なし」と書かれています。

つまり、40代の会社員(当時)は出世したかった。でも、上の世代(=50代)のように、「上司にゴマすって出世するような奴になりたくない」「他人の足を引っぱって出世する輩になりたくない」といったアンチロールモデルへの脅威を抱いていた。それがハセガワさんのようなお悩みになっていたのでしょう。

「やりたい!」と声に出そう

では、「まったく参考にならない」と今の40代が嘆く上の世代=ハセガワさんの経験の何が参考になるのか?

例えば、ハセガワさんの経験は、

・上司に意思表示をすべし!
・「結果的に出世」なんてありえない!
・やる気は声にしないと伝わらない!

という教えです。

「気が滅入り、落胆した状態。あるいは、ガソリンが切れた、モチベーションを失った状態」(前述)から脱するためにも、自分の心にしたがって、自分が「やりたい!」ことを声にし、「やりたい!」と言い続けてみればいいのです。

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「でもさぁ、やりたいとか、やらせてくれという部下を嫌う上司もいるから、余計に人
間関係わるくなるんじゃね?」と心配する人もいるかもしれませんね。

はい、います。おっしゃるとおりです。だからいいのです。上司に嫌われる、上等です! 上司の期待に応えるより必要なのは、上司に従わない、上司に嫌われる勇気です。「自己実現欲求」がなくなっていく自分に絶望していた人も、自分の心にしたがって「やりたい!」と声にしてください。 

そもそも「やりたい!」と言い続ける目的は相手を変えることではなく、自分が変わること。「未来の記憶」を作る行為です。

未来の記憶だなんて変なこと言うなぁと思うかもしれませんが、人は本能的に未来への行動計画を想像し、作り上げ、それを前頭葉に記憶させるようにプログラムされています。その未来への記憶に合致する選択と行動を無意識に行う機能が、私たちの脳にはある。

未来の記憶は、どんなキラキラした自己啓発本より効果的だし、どんなバリバリ成功した人の話より納得できる「私」を作るのに役立ちます。

何が変わるのか? 体感してみてください。

河合 薫 健康社会学者・博士、気象予報士

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かわい かおる / Kaoru Kawai

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究にかかわるとともに、講演や執筆活動を行っている。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。2018年4月に、無責任な上司、仕事と家庭の両立、長時間労働などの職場の問題を考える『残念な職場』(PHP新書)を刊行。

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