「どの世代よりも苦しい」悩む40代に伝えたいこと 就職氷河期に就職し、ロールモデルのない悲哀

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世の中「役に立たない」ように見える中にも役立つことがあったりもするので、上の世代の人間ウォッチも暇つぶしにやってみるといいと思います。といっても、すぐにはできないでしょうから、みなさんがまったく参考にならないと批判するバブル世代が、40代のときに何を考えていたのか? そして、そこからわかる役立つ情報は何かを、約10年前の2012年4月にビジネス雑誌に書いた「ある40代男性の嘆き」(つまり現在50代前半)から探ってみましょう。

「出世したい」と言えない心理

【証言 大手企業勤務のハセガワさん(仮名)インタビュー当時40代前半】

「上司と年2回面談があるんですが、そのとき、『なぜ、出世したいと言わない。出世したいなら、私としても教えなきゃいけないことがある。おまえがやりたいとか、問題に思っていることを解決するには、出世しない限りできないだろう。なのに、なぜそれをストレートに意思表示しないんだ』と言われたんです。

正直言って戸惑いました。僕はいい仕事をした結果として出世できればいい、と思っていました。出世レースのために仕事があるわけじゃないですから。でも、上司は『結果的に出世できればいい』なんて都合のいいことを言うなと。出世するということは責任を任せるってことだから、そのためには通常の業務以外にいろいろと教えなきゃいけないことがあるって。

上司に言われてハッとした。私は出世したいと思ってる。もっと責任ある仕事をやってみたいし、自分の思いどおりにもっと人を動かしてみたい。もっと新しいこともやってみたい。もう無理と諦めたくないと思っている。僕には出世願望があるって気づいてしまいました。

でも、『出世したい』って口にした途端、ろくでもないヤツに成り下がるような気がして。どうしても上司に出世したいと言えずにいます。オレって何なんだろう。自分でもわけがわからないです」

今の50代が40代だった頃、書店には“出世”に関するキャリア本が山ほど陳列され、出世は会社員と切っても切れない関係にありました。私自身、出世に関するコラムを何本も書きました。その度にコメント欄は「出世をどう定義するか」「出世は手段であって目的じゃない」といった、出世うんちくがあふれました。

会社員にとって昇進以外の出世などあるわけないし、手段だろうと目的だろうと出世したあと何をやるか? が問題なのに、「出世」について語る人が後を絶ちませんでした。

次ページ「上司にゴマすって出世するような奴になりたくない」
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