「どの世代よりも苦しい」悩む40代に伝えたいこと 就職氷河期に就職し、ロールモデルのない悲哀

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ところがふと気づくと自分も40代。いつかは開くと信じていた「出世の扉」は、待てど暮らせど開きませんでした。上の世代は年齢とともにそれなりのポジションにつき、給料も上がっているのに、自分たちにはそれがない! 「希望退職」という名の絶望リストラをいつ迫られるかもわからない。

悪いことをしたわけでも、インチキしたわけでもなく、ただただ一生懸命生きてきただけなのに、いったいなぜ? 「おい! この先どうすりゃいいんだ?」と憂えていたのです。

40代は「中期キャリアの危機」

ただでさえ40代は「思秋期」と呼ばれる微妙なお年頃です。

人間にはもともと「アイデンティティー」(自己の存在証明、あるいは自分自身は社会の中でこうして生きているんだという実感、存在意義)を探索する欲求がありますが、40代になるとまるで思春期の頃のように、自分の存在意義に不安を覚え、自分探しを始めることがあります。

職場での立ち位置の変化や体力の低下に加え、恩師の訃報が届いたり、同級生が亡くなったり、内的にも外的にもネガティブな経験が増える。親にも変化が訪れ、父親の背中が妙に小さく見えてしまったり、母親が同じ会話を繰り返すようになったりと、人生の時間的展望も微妙に変化します。若い時にはほとんど意識しなかった喪失感が身近になり、自分の人生の逆算が始まるのです。

キャリア心理学的には、40代の曖昧な不安は「中期キャリアの危機」と呼ばれています。アメリカの組織心理学者エドガー・シャインは中期キャリアの危機を、「気が滅入り、落胆した状態。あるいは、ガソリンが切れた、モチベーションを失った状態であり、彼らは自らの仕事に興奮を得られず、もし経済的に実行可能なら劇的なキャリア転換さえ夢みる時期である」としました。

上の世代なら「昇進」を目指すだけでよかった。しかしながら、40代には無理。会社側は「若手起用」に躍起になっているのでヒラの40代が昇進できる可能性はほぼなし。かといって転職をしようにも、履歴書に書く肩書きもない。この先どうすりゃいいのさ? せめてロールモデル示してくれよ! と願うのは、人間の自然な感情です。

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